最新号72号が発刊されました。

72号特集
平成28年度の豊島区“注目される街”から“デキる街”へ

消滅可能性都市から持続発展都市への道程
“注目される街”から“デキる街”へ
 第2のステージが始まっている

池袋に新しいにぎわいの場を ぶくろマルシェ
 byみんたん

こんな「まちづくり運動」の楽しみ方
 スーパーコイデシールの発想

今月のキラリ人
 猫と人との豊かな共生を求めて
 NPO東京キャットガーディアン 山本葉子さん

先進まちづくり事例
 にしすがも創造舎 12年の歩みを振り返る

豊島区議会 平成28年度の議会構成決まる

などなど盛りだくさん

特集:平成28年度の豊島区 「消滅可能性都市の発表」から2年
消滅可能性都市から持続発展都市への道程
〝注目される街〟から〝デキる街〟へ
  第2のステージが始まっている


日本創成会議(座長・増田寛也)から発表された「消滅可能性都市」の衝撃から2年が経つ。豊島区はそれ以来、迅速な対応で、そのイメージを払拭するべく動く自治体として「持続発展都市」に向けての大胆な政策構想が、メディアから注目される区になった。
昨年、平成27年の予算案で示した重点項目からは「女性にやさしいまちづくり」「日本の推進力・国際アート・カルチャー都市」の言葉が弾み、実際に昨年7月に国から特定都市再生緊急整備地域の指定を受けたことで池袋副都心エリア再開発の着手が決まっている。
こうしたなかで、平成28年度はこれまでとは違った視点で区政を見る必要がありそうだ。区の打ち出すインパクトある企画への注目を求める時期から、それらを具体的に実現する方策への着手の時期に入っている。
〝注目される街〟から〝デキる街〟へ、第2のステージが始まる今、豊島区の注目企画のなかから気になる点をあらためて考え、今年度の取り組みに期待していきたい。

国際アート・カルチャー
特命大使1000人の
インパクトを
どう展開するか

国際アート・カルチャー都市の推進のため、賛同する区民による応援団となる特命大使は、5月末時点での登録が1028人。1000人を越える大使組織は他に類を見ない取り組みとして評価を得ている。
この大使の役割は、特命大使通信などで都市構想に関するイベントや事業の紹介を受け、それらに参加する協力と周囲への伝達・普及を中心に、幹事会や全体会も定期開催するというが、「参加して、見るだけ聞くだけ」に留まらず、区民1000人が持つそれぞれの知識や経験を反映させてこそ「オールとしま」の推進パワーになるのだろう。それをどう引き出すか、区民パワーから何が生み出されるかにも着目したいところだ。

特命大使は「地域の牽引役」
実践者としての
生の声を聞く機会を
特命大使を引き受けた区民は、いずれも地域で活動している「まちづくり」の実践者であることに間違いない。地域内でこれまでもさまざまな活動に取り組んだり、テストケースにチャレンジしたりしてきた経験がある。だからこそ地域に根付く歴史や背景から生まれる成功へのヒントを持っている。今、豊島区が「国際アート・カルチャー」の代表的な取り組みとする事業も、急に降って湧いたものでなく、もともとは区民の小さなチャレンジから始まっているものが多い。最初にチャレンジして貴重なエラーを積み上げて成功に導くのは区民の力である。
実践者としての生の声を聞く「懇談会」の場を設けてもいいのではないか。

女性にやさしい街&
空き家対策で
年間3000万円の
リノベ―ション育成支援。
効果をどう地域に
還元するか

空き家の戸数3万戸、空き家率で15.8%と23区でワースト1となる豊島区。その対策として若者や女性にも支持されている「リノベーション手法」で民間主導の公民連携によるまちづくりを推進することを目的に「豊島区リノベーションまちづくり構想」を策定し、話題となった。今年もリノベーション手法を学んだ企画者が、自立したビジネスモデルでの空き家改築を実践する予定だが、この事業は、企画者だけでなく空き家オーナーの参画があって始めて成立するもの、企画者の育成と同時に区内の空き家オーナーの賛同がどれだけ進むかに実現性の可否がかかっている。今年の事業化件数の目標は20件。育成プログラムの年間予算には3000万円が計上されている。昨年は「シーナと一平」「日の出ファクトリー」の2件が先行実施されたが、年間予算の費用対効果をどう地域に還元するか。オーナーへの取り組みももっと必要のようだ。
また、自立したビジネスモデルに該当する対象になる空き家は、やはりビジネス上の収益が得られやすい環境にある物件が選ばれやすいだろう。それはつまり新しいビジネスを始める一件なのである。こうした潜在的な物件を探し出すも対策の一つと言えなくもないが、多くの空き家がビジネスしやすい潜在的環境にあるわけではない。

空き家の実態調査と
状況分析を精査して、
複数の手法で空き家対策を
とすれば、現状の空き家の状況を明らかに調査分析し、リノベーションまちづくりの対象になる空き家を探すと同時に、さまざまな手法での空き家対策をとる情報取得を進めるべきだろう。区内には民間賃集合貸住宅の空き家がほとんどと聞く。人口減少社会をこれから迎える今、リノベーション以外にも複数の空き家対策手法を採用する政策へ注力する必要がある。

都市再生特別地区となり池袋西口再開発が着手。高層ビル街で、どう池袋西口らしさを反映するか

池袋駅西口の駅前再開発が動き出した。特定都市再生緊急整備地域を受け、ようやく再開発に着手する。地権者などでつくる再開発準備組合は、事業協力者として三菱地所と三菱地所レジデンスを選び、具体的な構想を練り始めている。再開発の対象区域は東武百貨店を含む約5.3ヘクタールの大規模開発となる。現時点の構想では平成30年度末に東京都の都市計画決定を受け、商業施設が入る高層ビル建設など具体的な計画づくりを進め、平成45年度までに再開発を完了するスケジュールだ。
再開発地区は都市再生特別地区による容積割増を1500%以上までに引き上げたい考えで、これには地区独自の都市再生への貢献による評価が容積率緩和に反映するため、区は西口の再開発に合わせ、現在計画中の東西デッキ建設も含めて検討している。
準備組合は「つながるまち」をコンセプトとして、街と駅、人と人、東と西、世代、みどり、今と未来、地下と地上を「つなぐ」。池袋駅に滞留しがちな買い物客らを西口駅前に呼び込む魅力づくりにも重点を置いているが、高層ビル群のなかで、様々な文化イベントで利用されている西口公園や東京芸術劇場、立教大学といった文化・芸術の発信地としての池袋西口らしさを、どう反映させ充実させられるかも大切な視点として忘れてほしくない。

今こそ、再開発組合と並行し、地域の歴史や文化を踏まえ、池袋西口らしさを考える研究会を
池袋西口には、日本を代表する芸術文化の歴史がある。大正自由教育の花開いた地として、「赤い鳥」をはじめとする児童文学の発信地として、そして池袋モンパルナスの芸術の創作熱極まる地として、自由の学府・立教大学のある街として…
再開発組合はもちろん開発効果や権利変換効果を研究する役割を持つ。一方、同時に、池袋西口の歴史や文化を踏まえ、池袋西口らしさを考える研究会も並行して考える場が必要ではないだろうか。

平成28年度は企画から実践へ
第2のステージの時期を充実させよう!

いずれにしても、今年は〝注目される企画”をどう〝デキルる街の実践〟に育てるかが問われているように思う。折しも今年度の区の組織改編でも「シティプロモーション推進課」はなくなり、「女性にやさしいまちづくり担当課」や「国際アート・カルチャー都市推進担当課」など実践レベルに力を入れている。企画から実践の時期へ、第2ステージは始まっている。

おすすめ書籍

「財政支出ゼロで220億円の新庁舎を建てる」
溝口禎三 著

財政支出ゼロで220億円の新庁舎を建てる

豊島区をこよなく愛する著者が前著『文化によるまちづくりで財政赤字が消えた』に引き続き書き下ろした第二弾!「豊島区に住んでいて良かった」としみじみ思える本です。

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