最新号95号が発刊されました。

95号特集
新副区長 齊藤雅人さんに聞く

新副区長 齊藤雅人さんに聞く
地域内と地域外の連携強化でレガシーを生むチャレンジを応援したい

トイレからはじまるおもてなし byみんたん

池袋疾走日記 第11回
2018.5 by古市コータロー

今月のキラリ人
ゆっくりとした動きで集中力倍増 
呉式太極拳 有賀晴美さん

雑司ヶ谷物語 第20回
円朝作「怪談乳房榎」に所縁のある南蔵院

「豊島区・池袋計画2050」東大五月祭で東京大学
工学部社会基盤学科の学生が提案

などなど盛りだくさん
特集は以下から読めます。

特集:豊島区 新副区長 齊藤雅人さんに聞く

地域内と地域外の連携強化で
レガシーを生むチャレンジを応援したい

 今年2018年は年頭に高野之夫区長が豊島区新時代へホップ・ステップ・ジャンプのホップと表現した通り、来る19年の東アジア文化都市、そして20年の東京開催オリ・パラ、そして2020以降の新時代のスタートを迎える年になる。
 その4月1日から新しく副区長となった齊藤雅人氏は、これまで高野区政の重要施策を担ってきた行政マン。区職員としては16年ぶりに交代する新副区長として、どのような高野区政の運営体制をつくるのか、その方針と意欲を伺った。
(聞き手 本誌・小林俊史編集長)

地域とともに動くこと
地域の主体的な行動を
サポートしていく

 ―区職員としてのお仕事で、これまで大切にしてきたことを教えてください。
 齊藤副区長:昭和60年に入庁して最初は都市計画課への配属でした。街のかたちの将来像にはその頃から縁があったのかもしれません。その後企画課や広報課を経て、今から15年ほど前に住宅課長として「豊島区法定外税検討会議」のなかで「ワンルームマンション税」の創設を担当しました。区民代表の方や学識経験者、関係団体の代表者の方と税導入の妥当性や適否等について喧々囂々と議論したことが思い出されます。
 その後企画課長の際には、自治基本条例の検討にあたりました。「参加と協動」をキーワードに、「協動」は、今よく使われる働くの字ではなく、動くという字にして考えたのですが、今思い出すと頭で考えた理想にこだわっていたような気もします。
 そう感じられるようになったのは、地域の魅力を掘り起こそうと「地域ブランド創出プロジェクト」に携わって実際に地域をよく歩き、地域の方々と面談する経験を重ねたからでした。 
 池袋はもとより駒込、巣鴨、大塚、雑司ヶ谷に長崎、南長崎などなど「歴史と文化のまちづくり」や「地域協働プロジェクト」に顔を出し、参加し、懇談をするうちに、行政が一方的に「まちづくりをしましょう」と声をかけても空回りするようではいけないと思うようになりました。地域の人からしてみれば行政は地域のことを本当にわかっているのか、それぞれの地域が育んできた歴史や祭りや文化などの地域資源の活かし方について知識や経験を持っているのか、という気持ちを抱くのは当然で、行政は旗振りだけでなく、地域の人が一緒にやろうという気持ちが起きるように動かなければまちづくりは継続しないということに気づいたからでした。
 それまでの行政にそうしたノウハウがないなかで、行政が地域のまちづくりをリードすることの難しさを感じました。
 そして「国際セーフコミュニティ認定取得」の際には、「市民が積極的に地域に参加するコミュニティでは、教育、貧困、失業、犯罪・事故、疾病、健康、住環境などの問題について、よい結果が生まれる。」とWHOの研究者が提唱したように、初期段階から地域の皆さまと一緒に動かないとできないと肝に銘じて取り組みました。
 こうした経験のなかで、行政サイドからのまちづくり方針・視点だけではまちづくりは進まない、地域の方々の主体的な行動をサポートするのが行政の役割だと認識することを大切にしてきたように思います。

地域内連携と地域外連携の両方を強化するバランスが必要

 ―豊島区の特徴とその活かし方について課題はどこにあるとお考えですか。
 齊藤副区長:旧庁舎跡地の活用、ハレザ池袋の開発を担当した際に感じたのは、豊島区の魅力や存在感を地域以外の方々に対して示す動きがこれまで不十分だったのではないかということでした。豊島区は23区のなかでも比較的、地域内での連携は強く、区内のまちづくりにおけるメンバーシップには確かな力があります。しかしながら、外向けの投資を意識しての情報発信やセールスについてはこれまで経験が少なく、地域外の連携先を意識することが課題だと思いました。
 今では当たり前のように大手企業が進出してくるような気運があるように思えますが、その当時は都市間競争の中で副都心池袋といえども、地域への投資誘致を実際に経験すると、しっかりとしたセールスができなければ良い結果は得られないという当然のことを改めて認識させられたのです。
 豊島区を実際に知る、そして連携するメンバーシップを地域外にも広げ、有効な関係を豊かに持つことが持続可能な地域力に必要なことだと思います。
このことは、地域のまちづくりの活性化にも通じます。それぞれの地域活動が豊島区外にも関係を広げ、新たな連携やその地域の魅力を知るファンづくりを展開することで、持続発展可能な地域力が生まれるように思うのです。
 もちろん地域内連携は、地域力向上の基本です。ずっと長く住み続ける人が多くいるということは、間違いなく地域の力になっています。
 これからは、地域内連携と地域外連携の両方を強化するバランスが必要だと考えています。

庁内連携をしっかり図って、
一体となって進む組織に

 ―副区長として組織運営の面で気にしていることはありますか
 齊藤副区長:もちろん水島前副区長のようもちろんこれまでの水島前副区長のような強いリーダーシップを、というわけにはいきませんが、行政は地域連携、公民連携を主軸に進める時代になっています。庁内でも各部の部長及び職員と一体となって連帯して進んでいけるよう、庁内連携をしっかり図れるようにしたいと考えています。
 実は最近、ある方から一冊の本をご紹介いただきました。司馬遼太郎さんの小説「項羽と劉邦」です。鬼神のごとき武勇による強大な力で常時惹きつけた項羽と、個の力を補い合う臨機応変な力を作用させた劉邦を描いた物語に対照的な組織論を読み取らせていただきました。私自身を顧みる機会となりました。ご教授に感謝しております。
 時代の変化に負けない持続可能な「豊島力」をこれからも保ち続けるよう、地域の皆さんと一体となってまちづくりに取り組む豊島区らしさを大事にしていきたいと思います。

レガシーを生むチャレンジができる環境づくりを
目指したい

 ―2018、19、20年への意欲をお聞かせください
 齊藤副区長:豊島区の魅力は、歴史や文化の異なるいろいろな表情を持つ街の存在と発信できる舞台を持つことです。そのことがもっと外に向けて評価を得られるように積極的なチャレンジを打ち出していいと思っています。
 オリンピック・パラリンピックの開催機会が、未来の世代に継続的に残す有形・無形の価値つまりレガシーを生む文化活動であるなら、事前にどれだけ人々の関心や機運を高め、機会を最大限生かすかで、その成果は大きく変わってくると考えています。
 そのためには、先ほども挙げましたが、豊島区と区民の皆さんが一体となったまちづくり活動を地域内のみならず地域外にも連携させる範囲を広げ、積極的に活動の評価を得るような展開が図れるようにしたいと思います。
 外部にも共感と評価を得られるまちづくり活動は、その活動自体がファンを増やし、有効な資源を増やして「地域力」を向上させていきます。まさに消滅可能性都市を跳ね返したこの4年間の豊島区の取り組みを継続発展させるものです。次は都内自治体の難題とされるふるさと納税の流出を打ち返すような、一つの区の文化活動にとどまらない運動に発展することが期待できます。それが豊島区の未来を拓くレガシーとなるでしょう。
その意味で最近、「ファンを増やす」「関係人口を増やす」というキーワードにも注目しています。
 地域の皆さんや区役所職員とともにこうしたチャレンジが積極的にできる環境づくりを目指したいと思います。

 ―ありがとうございました。

おすすめ書籍

「財政支出ゼロで220億円の新庁舎を建てる」
溝口禎三 著

財政支出ゼロで220億円の新庁舎を建てる

豊島区をこよなく愛する著者が前著『文化によるまちづくりで財政赤字が消えた』に引き続き書き下ろした第二弾!「豊島区に住んでいて良かった」としみじみ思える本です。

定期購読のお申込み

『豊島の選択』購読をご希望の方は、詳細をご覧ください。お申込みは、お問合せフォームからお受けしています。