とっぴぃ「豊島の選択」最新号(117号)が発刊されました。

117号特集
シリーズとしま共創トークvol.4「としま共創トーク 創業支援によるまちづくりとは」
柳田好史さん(特定非営利活動法人 としまNPO推進協議会 代表理事)&
長島一誉さん(養老乃瀧株式会社 営業グループ営業戦略セクション 広報チームリーダー)です。

第2特集は『としま文化の日』
豊島区は2020年より、文化によるまちづくりを推進するため毎年11月1日を「としま文化の日」とする条例を制定しました。また、11月1~7日を「としま文化推進期間」と定めて、区内の各所で様々なイベントを開催します。

好評連載陣は
・みんたんの選択(豊島区のIT教育はいかに?小学校パソコン活用最前線!)
・池袋疾走日記(第33回 2021.10)古市コータローさん
・We can do it! Toshima! VOL.10(2021.10)村瀬 愛さん
・街のこころ 大塚ものがたり⑩ 城所信英さん
・雑司ヶ谷物語「吉宗による将軍権威の強化 鷹場維持の為の「御犬部屋」」
・大切なことはすべて時代劇から教わった 大橋英晴さん
・豊島区の文化的遺産としての「新教育」運動 東谷仁さん
・トキワ荘のある街から「トキワ荘の少女マンガ」展を開催中!」 小出幹雄さん
など

第3特集は
令和3年第三回区議会定例会招集あいさつ
話題になった池袋駅構内の西口側のイメージ図も掲載されています!
他にも地域の情報盛り沢山でお届け中です!

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特集は以下から読めます。

特集:「創業支援によるまちづくり」とは


柳田好史(特定非営利活動法人 としまNPO推進協議会 代表理事)&
長島一誉(養老乃瀧株式会社 営業グループ 営業戦略セクション 広報チーム リーダー)

柳田:私たち「としまNPO推進協議会」は、全国でも珍しいNPO等の中間支援をする民設民営の組織です。地域で社会貢献活動をしているNPOやボランティアグループ、企業のCSR活動などを対象にセミナーや相談、ネットワークづくり、イベントなどを行っています。
具体的な活動としてまず良く知られているのは「社会貢献活動見本市」です。これは各団体の活動をプレゼン発表してもらうイベントで、情報発信と情報共有をすることで各団体との連携等ネットワークによる活動基盤の強化を図るものです。例年は豊島区役所1階センタースクエアで各団体が作成したパネル等を展示して交流会を行っていましたが、昨年度の第15回目はコロナ禍によりYouTube配信によるWEB見本市を行いました。それでも年々参加団体も増えており、また協賛企業も多くなり、プレゼン審査による「としま社会貢献活動大賞」等各賞の表彰式も毎年盛り上がっています。
普段は豊島区地域活動交流センターの運営を豊島区から受託し、相談窓口や各種情報のご案内などを行っています。これは西池袋にあるイケビズ4階にあります。ここでは、NPOの会計、設立準備などの相談や講座・セミナー、会議室や印刷機の提供などを行っています。また、区民ひろば運営団体のNPO法人化支援事業、地域サロン「みんなのえんがわ池袋」の運営なども行っています。

柳田:私たちは、地域の方々が、時代のニーズに合わせた新しい活動を開始されたり、継続されることをサポートするのをミッション(使命)としています。そこでCB(コミュニティビジネス)やSB(ソーシャルビジネス)の分野の支援も積極的に行っています。東京都から受託している「女性・若者・シニア創業サポート事業」、豊島区との共催による「としまソーシャルビジネス支援ネットワーク」、東京商工会議所と「としまイノベーションプランコンテスト」を協働で開催などもそうですが、そのうちの一つが、養老乃瀧株式会社と協働して行っている「としま情熱基金」です。この窓口が長島さんです。「としまのまちをステキにする提案」のサポート資金になっています。

長島:私どもの会社はご承知のように大衆居酒屋を運営させていただいております。創業は長野県松本市。昭和13年から事業を行っておりましたが、居酒屋の養老乃瀧1号店は昭和31年に横浜で開店し、以来今年で65年になります。池袋西口で営業している店舗は35番目にできたお店で、現在の所在地は店舗兼本社になっています。
弊社の居酒屋は直営のほかにフランチャイズ店舗が多く、加盟をしていただいたお店のオーナーの方がいらっしゃいます。居酒屋はいわゆる日常食ですので、そのお店の地元で生活する方々にご利用いただいてこそ成立する商いだと思っております。地域の方々に必要とされ、支えてもらえるお店を目指すことが、本部と呼ばれる私どもだけでなく加盟店のオーナーの方々にも社是として共有しております。各地の加盟店のオーナーの方々のなかには、例えば地域の少年野球のお手伝いをされたり、介護グループの方々が会合する際に場所を提供したり、いろいろな形で地域の方々と接点を持ち、恩返しをするという考え方で一つ一つ積み重ねて参りました。

◎としま情熱基金の発想
長島:先ほど、柳田さんから挙げていただいた「としま情熱基金」はそうした取り組みの一つになります。これはメニューにある「バクハイ」という飲み物をご注文いただくと、一杯につき10円が地域活動の資金として寄付されるという仕組みです。
この取り組みにつきましては、ご注文いただく方々はもちろん、この活動をご存知いただく方々や、資金を提供させていただく活動をする団体の方々など、いろいろな面で地域との関わり方ができると考えております。
柳田:この「としま情熱基金」の発想の始まりは長島さんなんですよね。当初、私が相談を受けたときは「バクハイ基金」と名付けようか、という声もあったけど。「としま情熱基金」は良い名前になりましたね。

長島:はい。きっかけは池袋のお店で何か地域のお役に立つことをしよう、というのが原点だったんですけども、そもそも池袋の方々が何を望んでいるのだろう、私たちは何を地域貢献したらいいのだろう、というのが今一つ掴めず、課題でした。そこで柳田さんにご相談したところ、豊島区にはさまざまな地域活動を進める方々がいらっしゃることを知って、そうした活動の基盤となる資金面で応援したいと思ったのが始まりです。 そこで、ボルヴィック社が行っている「1L for 10L」をヒントに、自社商品の売上げの一部を地域貢献活動の資金に充てることを考えました。ネーミングについては、実はSNSのタイムチケットというサービスを利用しました。ネット上で各自の得意分野を提供して30分単位で相談できるサービスです。この時はコピーライターの方に相談をして、この活動は何より気持ちが大事ですね、という話になり、パッションという単語が出てきて、最終的に「情熱」と「基金」の組み合わせになりました。やはり地域の皆さんとまちづくりをしていくことが目的なので、「としま」という地域名を入れて、気持ちを持って応援していくんだというところを大事にしました。

柳田:この情熱基金の特徴は、地域住民とお店が無理なく繋がり、営業とともに連携しながら社会貢献に役立つ現象を作っていくことができることです。「バクハイ」の例にならって、それぞれの企業が自社の商品やサービスを「としま情熱基金」の対象にすることができるため、幅広い展開が期待できます。例えば、池袋西口のイタリアンレストラン〝オステリアサンテ〟では、日替わりパスタの一品を「としま情熱パスタ」としていただいています。このお店でパスタを注文すると基金が増えるのです。すでにこうした商品やサービスを提供していただける協賛会社は20社以上になっています。

長島:私たちも、地域の方々が何か新しいことを始められ、それが地域社会を良くしていくときに、その活動を地域のお客様と一緒に応援できることは嬉しく感じています。一定の寄付金による応援もありますが、お店も地域と連動した好循環を生み出せることがこの基金のポイントだと思います。

◎創業支援とはCBやSBの担い手を増やすこと
柳田:先ほど私は、としまNPO推進協議会で創業支援に力を入れていることをお話ししましたけど、今、長島さんが指摘した「地域で新しいことを始める人たちを応援すること」とは、地域サービスの担い手を増やすことに繋がるのだと考えています。行政に加えて、地域サービスの担い手をたくさん持てる街は、やはり「住みよい街」になるのです。そうした意味から、私たちの創業支援とは単に起業家を支援することではなく、CB(コミュニティビジネス)やSB(ソーシャルビジネス)の担い手を増やすことと意識しています。社会の新しい課題に対応していくのは、やはり一番その現場に近い民間の手によって、いち早く、より良く進めていけるのだと思います。

長島:私もその考え方に同感です。柳田さんからご紹介いただいた実例がありますよね。

柳田:不登校になった方の支援事業をしているNPOのことですね。フリースクールの場所として養老乃瀧の昼間の店舗を無償で貸してもらいました。彼らの一番の課題はフリースクールの教室の賃料でした。あまり交通の便が良くないと子どもたちも来てくれないそうです。また教室風なところも敬遠される傾向があるとも聞きました。そこで長島さんを通じて養老乃瀧の矢満田社長に相談したところ、池袋の駅前の店舗内を無償で提供いただきました。昼は勉強をして、勉強をした後は、お店の掃除やお店前のゴミ拾いなどもするプログラムが行えたそうです。なかには、そのままアルバイトをしたいと希望する方もいたと聞きました。これはSB(ソーシャルビジネス)支援の典型的な成功事例です。

長島:こうした場所を提供することも地域の好循環の一つになれるのだと思いました。としまNPO推進協議会のネットワークのおかげだと思います。柳田さんからのご相談があったからこそ、そうした気づきができたと思います。

柳田:いや、それはやっぱり養老乃瀧さんのおかげですよ。矢満田社長が、そういうことなら無償でいいですよと仰られたときは、こちらも実はビックリしました(笑)。
◎楽しく続けることが大切
長島:柳田さんとの会話は相談と言ってもいつも楽しそうですよね。その楽しい雰囲気に惹きつけられます。昨年からのコロナ対策緊急事態宣言で、私たちも想像していなかった難しい時期を経験しました。新しい課題はこれからも出てくると思いますが、相談できたり、応援しあえる関係が地域でできることはとても心強いことだと改めて感じます。それは、これからCBやSBにチャレンジしようとしている方々も一緒だと思います。豊島区では、どんなことでも臆さずに楽しく相談できて、いろいろな応援メニューが使えることをもっと知っていただきたいと思います。

柳田:私たちの会も、多くの地元の団体に応援していただいているからこそ成り立っています。さまざまな連携を大切にしていくことが大事なのだと思います。 私は最近、若い方たちの社会貢献の意欲がとても豊かなことに期待しています。学校でも今はCBやSBについて学ぶ機会も多くなっているようで、社会の課題について積極的に考える若者が多いことを感じています。これからの時代は、彼らが40代、50代に成長してもそうした意欲を何らかの活動として継続していけるような社会環境が必要なのでしょう。そのためにできることは何かを考えていますが、基本は楽しく続けられるようにすることだと思っています。

長島:柳田さんと一緒にいると本当に楽しい気持ちになりますよね。先ほどサンシャインシティの方から新しいラウンジ「サンシャインシティソラリウム」がオープンすることを伺いました。私ども養老乃瀧とサンシャインシティさんの場をそれぞれ使って、豊島区を良くするコミュニケーションを柳田さんと一緒にこれからも楽しく進めていきたいと思います。
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2021年10月6日
㈱サンシャインシティ共創空間にて
◎としま共創トークは㈱サンシャインシティと「とっぴぃ」の共同企画です。豊島区のまちづくりの好循環をゲストの方の対談によって模索していきます。

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