最新号49号が発刊されました

49号特集
豊島区が〝消滅可能性〟都市とはいったい?
人口減少社会に向けて〜将来像の課題を洗い出すチャンスだ〜

ニコニコ本社池袋に上陸 !
(みんたん)

まちづくり最前線
紫雲荘にプロジェクト二期生の二人が入居

東京都の「女性・若者・シニア創業サポート事業」
としまNPO推進協議会

先進まちづくり事例
「まち」にストーリーとアイテムとスペースをつくろう
(すがもん屋 ㈱ワンダーネスト 川添尚子さん)

いきいき!オフィス女子を訪ねて
CHUETSU 中越自動車用品株式会社(椎名町)

歩こう!とっておきルート90分 大塚~巣鴨コース
などなど盛りだくさん

 

今月の特集
東京で唯一豊島区が名指し…〝消滅可能性〟都市とはいったい?
人口減少社会に向けて 将来像の課題を洗い出すチャンスだ

5月8日、日本創生会議・人口減少問題検討分科会(座長:増田寛也・東大大学院院客員教授)は、国内896の自治体を「消滅可能性都市」として発表した。これは全国自治体の49.8%、約半数に及ぶ数に上る。
〝消滅可能性〟の理由は、人口減少社会が到来する2040年に20~39歳の女性が現在(2010年時)の50%以下に減るという推測値によるもの。つまり子どもを産む世代(分科会では「再生産力」と呼んでいる)が半分以下になってしまう自治体に注意を促したことになる。
発表の主旨は、国全体の少子化傾向への歯止めと地方都市の人口減少対策にある。人口減少の最大の要因は、若者(男女)の大都市への流出にあるとするこの調査結果から、このまま地方からの人口流出が続くと、人口が一万人を切る自治体は全国で523自治体に及ぶ可能性があると指摘している。
その〝消滅可能性〟都市に豊島区が東京23区で唯一名指しされ、全国を驚かせた。
〝消滅〟という言葉の過激さに惑わされることなく、これを私たちはどう捉えればよいのかを考えたい。

なぜ〝消滅可能性”に豊島区があたるのか
もちろん1万人を切る都市になるというのではない。20~39歳の女性の数が今より半分以上減ってしまう自治体になりそうだというのだ。
計算根拠を見ると、日本創生会議の試算は、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口」(平成25年3月推計)をベースにしている。これは、2010年の国勢調査及び2000年以前の国勢調査の動向を反映して5歳ごとの階級別人口の増減率(純移動率)と5年後に生存している割合(自然動態)を現時点の人口数に乗じたもの。その他の係数条件は特にない推計値だ。(表参照)
豊島区側の分析でも、推計に影響を与えたと考えられる要因は2010年国勢調査までの、0~19歳の年少人口割合、合計特殊出生率の低さ、と20~39歳代女性の流出入比であろうとしており、いずれも最新調査では、増加傾向にあるとする資料を発表している。

地方から東京に流出するのに、東京でも減少する
もとは地方都市の人口流出が問題とされているのに、東京でも減少する。それが人口減少問題を指摘する発表の意図でもある。つまり人口減少社会は全国で共有することという問題提起だ。
実際、前出の推計人口によれば東京都の2040年の人口は、全年齢で2010年の約1316万人から約1230万人と86万人の減少、20歳~39歳の男女総数では約401万7千人から248万9千人となんと152万8千人も減るとされている。
〝消滅可能性”とされた豊島区以外の23区も減少率50%を超えたのは豊島区だけだが軒並み大幅減少となっていることには違いない。それは同時に、都内で人口流出入を競い合うような問題ではないということを意味している。

豊島区の対応は早かった
発表後の豊島区の対応は早かった。「〝消滅”に東京で豊島区」とのインパクトあるマスコミ記事に区民が不安を抱かないようにと、1週間後の5月16日には区長を本部長に緊急対策本部を設置し、緊急の風評被害と中長期対策の検討に入った。5月26日には対策の方向性を決め、29日に公表した。
記者会見で高野之夫区長は「消滅なんてありえない」と、驚いてはいるが、冷静に対応することを表明し、対策に向けた二つの柱を示している。その一つは「女性が暮らしやすい地域づくり」、女性の視点に立った総合的な施策を展開するとして、まずは女性の声を反映させるべく新たに「としまF1会議」(※F1とはマーケティング用語で20~34歳の女性群のこと)を開催する。また二つ目は「地方との共生」、豊島区と交流を持つ47地方自治体のうち25の自治体が消滅可能性都市に挙がったことを受け、共生のための自治体ネットワークを築くこと。
この具体策に着手しながら、この事案は個別の都市の問題ではなく、日本全体の問題であることを強調した。

持続可能都市へ民の力を求める「女性施策・地方連携・国際化」
さらに6月9日、渡邉浩志副区長は豊島公会堂で行われた区民フォーラムの講演「消滅可能性都市から持続可能都市へ」のなかで、このテーマに触れ、豊島区が今やるべきことは、女性にやさしいまちづくりで出生数を増加し、また転出を増やさないこと、地方との共生を掲げ、都市と地方との連携や往来によりお互いの魅力を増すこと、国際都市として成長し、世界を相手に稼ぎ、日本の推進力になることの3つを提示し、豊島の未来戦略は地域や企業など民間の力とともに、「人が主役の街にする」ことだと言及した。
この3つの分野はいずれも民間的発想での柔軟かつ斬新な知恵が必要なのは間違いない。
本誌でもこれまでに採りあげている、「ライフワークバランスを支える街」「東武線や西武線など沿線の一体的連携による魅力づくり」「LRTと駅前広場による国際的観光都市の演出」などもこれに該当するだろう。
民の力を求めるという区に、私たちは今こそどんどん提案していく時だ。

将来に向けて…既存住宅の将来像を考えるべき
人口減少問題に対する全体像、または都市像については、これらの課題を改善する努力が必要だが、さて、私たちは身近でこの東京の人口が少なくなっていくことに対してどう捉えればいいのだろうか。
一つ課題に挙げたいのは、豊島区のこれまで特徴的な住宅態様だ。他区に比べ流出入の傾向が多いのは、単独世帯の割合が高いこと、単身用住戸の多いこともその理由の一つになっている。
前出したように東京の人口、特に若者の人口が少なくなっていくなか、今後、区内の集合住宅など既存住宅の更新を迎える機会に、住宅態様自体を見直しし、持続可能な計画が必要になって来ると確信する。つまり空き家問題はますます深刻するだろうということだ。
これは、民間だけではなく区民が抱える都市整備の問題として豊島区が中心となって住宅建築物の更新問題を考えるべきではないだろうか。
〝消滅”から〝持続”へ、将来への課題を洗い出すことが、東京で唯一名指しされた豊島区のチャンスだ。

おすすめ書籍

「財政支出ゼロで220億円の新庁舎を建てる」
溝口禎三 著

財政支出ゼロで220億円の新庁舎を建てる

豊島区をこよなく愛する著者が前著『文化によるまちづくりで財政赤字が消えた』に引き続き書き下ろした第二弾!「豊島区に住んでいて良かった」としみじみ思える本です。

定期購読のお申込み

『豊島の選択』購読をご希望の方は、詳細をご覧ください。お申込みは、お問合せフォームからお受けしています。