最新号74号が発刊されました。

74号特集
豊島区「まちづくり」
2016夏 現場からの声

ボトムアップでクオリティをあげよう!
地域はもっと元気になれる

12年間ありがとう!!にしすがも創造舎
byみんたん

小池都知事はやると言ったことはやる
「満員電車ゼロ」にもチャレンジ 
 ㈱ライトレール 代表取締役社長 阿部等

今月のキラリ人
池袋という土地で一杯の味噌汁から伝統の〝和〟を伝えていきたい 
さーどぷれいす 和ビストロ ほたる 野口陽子店長

先進まちづくり事例
「調べる学習コンクールinとしま」
あなたも応援サポーターになりませんか?

などなど盛りだくさん

特集:豊島区「まちづくり」2016夏 現場からの声
まちづくりの最前線 プロジェクトリーダー3人に聞く
ボトムアップでクオリティをあげよう! 地域はもっと元気になれる

 さまざまな「まちづくり」運動が動き出している豊島区。国際アートカルチャー大使もすでに1000人を越えたという。しかし、今、地域のまちづくりの現場では実際、どんな課題や要望があるのか・・・。
 今回は、地域のまちづくり活動の現場に携わるトップランナーの方々から、現状の豊島区のまちづくりをどんなふうに見ているか、率直な意見を鼎談で伺いたいと思います。

出席者は次の3名の方です。
川添尚子さん…巣鴨地蔵通り商店街の「すがもん」運営者
竹田克也さん…「ながさきむら村議会」世話人 
中島 明さん…「としま会議」キュレーター

一緒に動く人がもっと欲しい

川添:私は、巣鴨地蔵通り商店街でのPR活動を中心に、巣鴨全体のまちづくりプロジェクトにも一部関わっています。一番身近なものは、ゆるキャラの「すがもん」と、商店街の入り口にある案内所の運営がメインなんですけど、「すがもん」の運営は当初の頃より順調にできていると感じています。巣鴨は知名度があるので比較的需要が生まれやすいことと、私が動きやすいようにしていただいているので地道に頑張ってこれたのがよかったです。
 でも、私たちがモチベーションを持ち続けても、この活動の基本はボランティアなので一緒に動いてくれるスタッフやアルバイト、学生などが、いろいろな環境の変化で、いなくなってしまうことがあります。それを補充するために人を探すのが大変ですね。
 私も商店街の事情はこの数年で理解していて、商店街はお店に専念するので、あなたたちは地域のためにいいことをやってほしい、という期待をされているのは十分わかりますから、求められているのは商店街内部でない人ということで、外部からの仲間を増やすようにしています。商店街の仲間、地域の仲間とうまく融合できて、巣鴨を何とかしたいというような気持ちの人がいないかなと目を光らせていますが、それは相当な難題です。結果的に全然地域と関わりのない外の人が仲間になりつつあるんですが、そうするとおのずとモチベーションや企画の発想から活動の範囲が地蔵通りではなく、広がってきちゃうんですよ。巣鴨じゃなくてもいいかなと思ってしまったりする。でもベースが巣鴨にあるからこそ成り立っているのも事実で、その気持ちの戦いだったりします。一緒に考えて、そして動ける人が欲しい。やっぱり人材のことが一番の課題です。

竹田:めっちゃ共感しますね。僕の場合は、東長崎駅周辺に商店街がいくつかあるんですけど、お互いにコンセンサスを取って一体となって取り組むというのがなかなかできないという問題を感じていました。
 そこで、住民だろうと、商店街だろうと、町会だろうと、外の人だろうと、どんどん地域に入って、出入り自由で、東長崎や椎名町の周辺のまちづくりのこと、まちをよくする活動ということを目的に、いろんな人と話してみようということで、4年前に、美容院の人と、劇場の人と僕の3人が発起人で「ながさきむら村議会」という会を立ち上げて、毎月続けています。やっていることはただ雑談をしているだけですが、その中からおもしろそうなことがあったらやってみようよということで、最初やったのはあまり使われていなかった東長崎駅の北口の駅前広場でのラジオ体操でした。もう4年以上、毎日続いています。その後、千早高校の高校生が入ってきて、ランチタイムコンサートができたりしたんですけど、そうしたことをきっかけに、商店街のイベントでも駅前広場を活用できるようになったんです。
 それはこれまでの成果かなとも思うんですけど、もともと地域の人たちをつなげたくて始めているのに、動いているメンバーに外の人たちが多くなると、商店街からは勝手にやっているなどと言われてしまいます。
 商店街の中だけのメンバーでは、それぞれに仕事があったり、既に地域のほかの役職を持っていたりするので、こうした新しいことは為し得なかったし、外から人を入れるという考えはなかなか生まれないので、だったら別のメンバーでできることから始めるようという発想だったのですが、なかなかその意図が伝わらないところがあります。

中島:僕は、豊島区に住んでちょうど10年です。巣鴨に1年住んで、池袋に9年住んでいますけど、ずっとつまんないまちだな、と正直思っていたんです。仕事は企業に化学変化を起こすことを提案するコミュニティデザインの類で、一日のほとんどが渋谷や丸の内にいて、新しい動きがこの周辺にはないと勝手に思い込んでいたんですね。
 ソーシャル的な新しいことをやるような人は池袋以外のところで活動する人が多くて、ベンチャーもあまり聞かないし、チェーン店が多いし、本当に引っ越す寸前だったんですけど、たまたま東池袋にロイヤルアネックスという賃貸マンションが、壁紙を選ばせるようなカスタマイズ賃貸というものを始めて、自分の思い入れがある部屋をつくる人が集まって住むようになって、そうするとマンション内に住人のコミュニティができたことを知ったんです。もともと倉庫兼事務所だった2階に、新しい幼児教室ができたり、シェアオフィスになったり、食堂をつくったりという感じで。
 僕はどこでも仕事ができるスタイルだったので、その面白そうなシェアオフィスに入居したんです。するとそこの大家がまた面白くて、まちの人たちが集まるイベントを作りたいと言うので、「としま会議」と名付けて、まちで商店会や町会のしがらみに関係なく、自分らしく動いている人に7分だけ喋ってもらう座談会を始めました。NPO系の人はNPO系で固まったり、アート系の人はアート系で固まったりするので、それを横串でつなぐ集まりがあったらいいなと思って、あえていろんなジャンルにして毎月開催しました。計18回、86人の方に登場してもらったのですが、すると、そこから会社が生まれたりとか、マルシェが立ち上がったりとか、いろいろでてきて、まちが変わる可能性を感じました。
 僕はわりと既存のところから離れてやっていて、逆に、最近初めて町内会に参加するようになって、地域はこんなにもやることが多いんだ、大変だなと思っているところです。「としま会議」に参加する人はサラリーマンや豊島区は勤務地という人もいて、そういう人たちは既存の地域の会に参加するって、すごいハードルが高いので、ほとんどの人が参加しないですよね。そういう人たちがまず集まりやすい場を作ったんですけど、この先、地域とどうつながっていくのかということが課題です。

地域に「まちづくり会社」が必要か

竹田:自分で何かをやるというよりも、何かつなげて新しい活動や価値が生まれてくるのってとてもいいことだなと思っています。一方で、何かをやろうという気になる人が増えれば増えるほど、事務的な作業量も増えますよね、区に申請にいくとか、説明するとか。今のところ、「おだてられるとちょっとやっちゃうか」ということを繰り返しながらやってきたんですけど、僕自身も手一杯になるときがあるんです。そうなったときそれを引き継いでくれる人がいなかったりとか…は悩みです。

川添:新たな企画を始めるときは、地域から「根回ししておくように」とすごい言われませんか?それも結構な活動量の負担になっていますよね。事前にお話していたはずでも「きちんと根回ししていない」と言われてしまう。

竹田:そういうふうに言われたくないので、僕は商店街の書類関係も引き受けていて、商店街の役員の会合にも参加するんですけど、それでも言われるわけですよ。今、ここの場でお話しているのが根回しですよ、って言っているのに(笑)。

中島:地域の人は会合でよく顔を合わせるけど、新しいことをやろうというと、手一杯感があって、ためらうことが多いと聞きます。それは地域の「根回し」の難しさを知っているからなのかもしれませんね。そういう人たちが外部からのやる気のある人たち、プロジェクトパートナーの人たちと組むことでその不安がなくなれば、新しい取り組みが進みやすくなるのでしょうか。

川添:私は今年、商店街で役員の改選があって、理事に打診されたのですが、丁重にお断りしたんです。組織のメンバーとプロジェクトパートナーでは立ち位置が違うというのはあると思います。私はある意味、商店街とパートナーになっている立場なのかもしれませんが、内部のメンバーがやりにくいことをあえて積極的にやるのも、また相談を受けてあっちいったり、こっちいったり、小間使いをしたりするのも、その立場だからできることなのかと思っています。

中島:三人の地域の関わり方はそれぞれ違って面白いですね。竹田さんは商店街の中のメンバー、川添さんはパートナー、私はまったくの住民と三様です。

川添:そのことでもう少し言うと、「すがもん」の運営などは、今、私の会社のまちづくり部門みたいになっているんですけど、2年前に「すがもん」を委託された時から、巣鴨の地域で「まちづくり会社」を作ってくださいとお願いしてきたんです。今年、それが少し動くかもしれないのですが、私の会社で受けていると、一民間会社の地域貢献活動になってしまうので、商店街を含めた地域のメンバーで「まちづくり会社」を作ってみんなで運営するのがいいと思っています。

竹田:まちづくり会社をつくるとどう変わりますか?

川添:商店街や町会、関係団体も含めた「まちづくり会社」が主体となれば、より公益的な事業が推進できると思います。もちろん会社経営なのでボランティアに頼るのではなく、経費を計上したうえで利益が出ればまちのものですから、地域の納得感もあるはずです。一つ一つの事業も、地域が合意して取り組めることになり、先ほどの「根回し」的な作業もシンプルに負担が少なくなります。企業や大学も巻き込んで、地域一体でまちづくりを進められれば、それぞれの取り組みが早く伝わり、進めやすくなると思います。

中島:僕は自分でもまちでプレイヤーしようと「日の出家守舎」という会社を始めています。今の既存のまちづくりって、ボランタリーで関わる人に頼るところがすごく多いから、もうちょっときちんと働けて、そこにきちんと支払ってクオリティをあげていくことも、いいまちづくりを生む方法かと思っています。私たちはシェアスペースの運営から始めているんですけど、将来的には空き家のリノベーションをするという事業を進めていこうと計画していますが、会社にしたとたんに、行政との付き合い方など難しいところもありますね。当然、仕事も市場で求められるクオリティ以上まで持っていかなくてはいけないのですが、それって結局、まちのためにはいいことにつながると考えています。地域に選択されるスキルを生み出すような「まちづくり事業体」として、今までと違うスタイルで、行政ひもづきじゃない形の存在が必要なんじゃないかなと思うんです。

国際アートカルチャーは
クオリティが大切
…もっとボトムアップで

中島:豊島区が目指している国際アート・カルチャー都市構想についても、取組内容のクオリティへの視点がもっと必要だと思っています。正直やっぱりなんか、池袋だなという感じがしちゃうんです。劇場型都市というキーワードには共感しているのですが、発想が、池袋でもともとある人気のあるコンテンツを引っ張ってきて、それで人を呼ぶぐらいのイメージしか浮かばない。それはアトカルを担当している人とか、アトカル構想を考えている人だけの話ではなくて、部門を横断した全体の話だと思うんです。本当はまちなかのいろんなジャンルの人が、それこそミュージシャンとかアーティストとかオタクとか地域どっぷりの人とかいっぱいいると思うんですけど、その人たちが目を輝かせて集うことのほうが、アートカルチャーらしいと思うんです。そのアプローチが逆な気がしています。実は私もアトカル大使になりましたけど、送られてくるチラシのクオリティがあがるとか、いろんなまちのサインのクオリティが変わるとか、そういう目に見えるところまでまち全体が一つのトーンで動いていかないと本気度が見えてこない。そこは今まで通りボランティアレベルのできる範囲で、というのではこちらも本気になれない。そこがすごく気になっています。

竹田:大使の話、あまり東長崎には伝わっていないようです。うち、練馬だと思われているのかな、大丈夫かな。来てないですよ。
 トキワ荘もモンパルナスも、すごい面白いけど、あの空気感をどう出せるかのほうが、アトカルにとって大きい。商店街のところに普通にマンガ家さんがいて、あいつマンガ家だよ、あそこで飲んでいるの、音楽家だよ、ああ、そうなんだ。そういう感じのほうが僕は楽しいし、商店街でもあの作家さん応援しようかなとか、じゃああの人に今度うちの看板描いてもらおうかとか、そういう発展のしかた、ボトムからあがっていくようなもの、そのほうが僕はアート的だなと思うんです。

川添:私もその感覚に近いんですけど、巣鴨は劇場みたいなものがひとつもなくて、のどから手が出るほど欲しいんですよ。元気な高齢者が楽しむ場所がすごく欲しいというのを前から言っているんですけど、それこそ池袋だけの話のような気がして、池袋ばっかり力を入れて、そういうのをやっているけど、巣鴨では、そんな話ないし、私から見ると、巣鴨はこんなに財産がある場所なのに、放っておいてはもったいないと思うくらい。

竹田:そう言われると放っとかれ感あるかもしれないです。結果、急に東長崎駅の中にジャングル大帝のモニュメントが登場したりとかしちゃって、南口はセレモニーやってるけど、北口のほう全然知らないし、みたいになっちゃって。え、この週末やるの? 手塚眞来るの、うらやましいなぐらいの感じで。ただのお客さんにされちゃったし。

川添:それ、多いですよね。巣鴨でイベントあるのに「すがもん」呼んでくれないんだとか。そこに悪気はないんでしょうけど、せっかくブランディングしているのにコラボしないともったいないと思っちゃう。そこでつないだり、補足しあったりできた方がいいはずで、第三者的にこうしたらいいんじゃないと言える人が地域にも行政にもいればいいんですよね。それが大使の仕事の一つかもしれないですね。

新しいことに対応する
専門部署を

中島:計画している事業をオープンにしてくれれば、活躍したい人は出てくるし、今までの町会とか商店街には参加してこなかった人たちも乗れる企画ってあると思うんですけど、行政セクションが連絡する対象はあくまで既存の団体に留まるから、それが広がらない理由だと思います。「としま会議」をやったときにも、テーマが自由で誰がやっているかわからないものは行政側にも受け皿がないと。既存の枠組みには行政も対応できるんだけど、今の手持ちで手一杯だから、新しい企画が動き出してもすぐに担当して内容を知ってもらってまちづくりにつなげてくれるような担当セクションを決めきれない。 
 とすれば、新しいことにすぐ対応して関係する地域情報や活動する区民の情報を調査して横断的に提供する専属のセクションが行政にあればいいのかもしれません。

竹田:区の説明会などで平場で集められて、ご意見をどうぞと言われても、突っ込んだ話ができないから、そういう担当があった方がいいですね。施策に対してクレーム意見ばかりの説明会もあるから、やりたいことなんて言えなくなってしまう。

川添:クレームとやりたいことを分けて聞けばいいのにね。新しいことを始める区民プロジェクトチームを育てることに専念して頑張るという専門課があってもいいよね。

竹田:商店街や地域に気を遣いながら一方で新しいことをやるのは大変だからね。新しいことをやるチームが実行するための意見をちゃんと言えるような課があるとうれしいです。僕たちは場所の裁量権がもうちょっと欲しいなと思っています。駅前広場の使い方とか。商人まつりの時しか販売できないんだよね。区もそうしていくとは言っていますけどね、ハードルは高いなという気がします。

中島:池袋西口公園では、社会実験で地域の活用委員会ができているし、南池袋公園も、地元の人と組織を作って仕組みを整えて活用を決められるようにしていますよ。行政と地域を結ぶために一緒に一歩前に出て来て、相談できる人が必要だよね。

川添:そこは本気でないと、一緒にやる覚悟が生まれないんですよね。行政も地域もお互いに本気だからこそ、お互いが熱くなれる。

竹田:ご一緒に話しているとなんだかできそうな気がしてきました。

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