最新号82号が発刊されました

82号特集
豊島区が進める 新たな公共・公民連携とは

公民連携推進窓口を6月に創設

イマドキの豊島区立小学校事情
byみんたん

今月のキラリ人
ボランティアコーディネーター
布施川 香保利 さん

先進まちづくり事例
障がい児をあたたかく迎える放課後等デイサービス 
株式会社ライトハウス 南長崎

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第七回 
豊島区の「水」と「土」から生まれた竹本焼

アート探偵団
映画に魅せられた文豪・文士たち

などなど盛りだくさん
特集は以下から読めます。

特集:豊島区が進める新たな公共・公民連携とは

公民連携推進体制窓口を6月に創設
~提案窓口を 一括化~

 豊島区は、今年の予算の特徴を「公民連携を進め新たな公共へと発展する予算」、と表現し、区政の課題に公民連携の手法を積極的に採りいれていくことを強調した。 
 特に今年は、比較的規模の大きな民間事業者(企業)をパートナーとして想定した連携・協働のあり方や推進の仕組みを整備するという。
 企業との連携をどのように進めるのか、その目的はどこにあるのかを、今年度新設された公民連携推進担当課を担う、城山佳胤政策経営部長に伺う。
(聞き手 本誌・小林俊史編集長)

目的は公民連携の提案の
接点を広く持つこと

――行政と民間との連携は、これまでも区政の基本方針となっていましたが、今、さらに取り組もうとしているのは、どのような点ですか。
(城山部長)多様な主体との連携・協働は平成15年の豊島区基本構想以来、町会・自治会・NPO・大学・事業者などとさまざまな取り組みをしてきました。公民連携は、PPP(public private partnership)と呼ばれる、公共サービスに、民間の知恵やアイデア、資金や技術等を取り入れて、効果や効率を向上させる手法です。これまでにも区有施設の指定管理者制度、あるいは最近の新庁舎整備と庁舎跡地活用プロジェクトも官民連携のPFIの発想にたった都市再生モデルが注目されるなど、可能な限りチャレンジして取り組んできました。
これからは、ハード整備に限らず、より多様化・高度化する行政需要に応えるために、さまざまな政策分野に民間との連携を拡大し、地域課題のより効果的・効率的な解決を図ることができると考えています。
しかし、この間、民間事業者の方々と区の実際のプロジェクトで連携してみると、民間の手法や技術に対し、まだまだ未知なことが多いというのが実感です。行政側も企業側も知らないことが多すぎるので、提案ができないということもあると感じました。行政側が公民連携で最大限の効果を発揮させるためには、もっと具体的な対話や経験を積み重ねて民間のトレンドを知る必要があります。
そのため、今回は公民連携の提案の接点を広く持つことに積極的に取り組む方針です。

「新たな公共」は人口減少社会に向けた未来戦略

――公民連携により新たな公共へと発展するという言葉がありました。その効果はどう表れますか。
すぐに効果が出るというものではありませんが、大きな目的としては将来に向けて二つあると考えています。
一つは、まちのブランドを高めることです。現在、区の人口は微増していますが、将来は確実に人口減少社会になっていく日本で、いつでも高い水準の公共サービスを目指し、維持していくためには、都市間競争を無視するわけにはいきません。財政が均衡できる都市になるには、住民の方はもちろん、民間事業者からも選ばれる都市になっていく必要があります。それには、住みやすく事業しやすい、そして選ばれる「まちづくり」への効果が求められています。
もう一つは、公共資産のランニングコストに対応していくことです。これまで4年連続で財政調整基金を取り崩さずに構成してきた結果、貯金は4年間で104億円増加、新規拡充事業は25年度の32億円の2.5倍にあたる81億円の実施ができるほど、区の財政基盤は強化されてきています。しかし、29年度は過去3年連続で続いた歳入環境の改善が小休止し、一般財源歳入は前年度比で4億円の減となるなど、歳入の右肩上がりを前提にした財政運営では、強固な財政基盤の維持は困難な状態です。これから5年間の公共施設の維持更新費だけでも、毎年20億円以上と試算されています。税収入のみを当てにするのではなく、地域や企業などの民間の力を組み入れた、効率的で質の高い公共サービスの提供もまた求められています。
新たな公共の構築は、「消滅可能性都市から持続発展都市へ」を実現する重要な未来戦略と認識しています。

企業側の変化にも対応
~CSRとCSVの考え方~

――民間のトレンドを知るということは、どういうことでしょうか。
時代に敏感な民間事業者と連携しながら公共サービスの効果的な提供を創出することは、今申し上げたように重要な施策なのですが、一方で慎重に検討すべき課題があることもこれまで同様に意識しています。
例えば企業のCSR活動Corporate Social Responsibility「企業の社会的責任」は、公益活動と結びつきやすく行政と協働の形になっているものが多いですが、最近は、これとともにCSVという考え方も生まれています。英文字表記は似ていますが、CSVとは、Creating Shared Value「共通価値の創造」のことです。
どちらも同じく社会的に対する責任や活動のことですが、従来のCSRが、コンプライアンス(法令順守)や、環境分野などの社会貢献的活動として本業の周辺としての活動であったのに対して、CSVは、社会的価値の実現を通じて事業価値や競争力を確立する新しいイノベーションを促す動きとして、本業=事業そのものでの戦略的展開が目指されています。
行政と民間事業者との連携は、その事業手法や技術をお互いに活用することを目的としながらも、社会的意義と公平性を常に意識しながら進める公益活動のためであることが目的です。そのため、行政は民間のトレンドを知り、公益を考え、良い効果となる活動を生み出す姿勢が大切なのです。

公民連携推進窓口を6月に開設

――公民連携の推進体制はどのようになるのでしょうか。また、大規模な民間事業者を想定しているのはなぜですか。
専管組織として新設した公民連携推進担当課は、企業等のCSV経営の動きが広がる中、比較的大規模な民間事業者をパートナーとして想定した「新たな公民連携(NPPP)」モデル事業の総合調整、横断的な展開を図る役割となります。企業等からの相談・提案窓口を一元化する推進窓口も6月頃には開設する予定です。 
この時点で、比較的大規模な民間事業者をパートナーと想定しているのは、第一段階として、まずは幅広い視野で情報交換や情報取得を図り、先ほども申し上げた、民間のトレンドや連携の課題を見極めたいという目的があります。
豊島区だけでなく、広い地域で活動する民間事業者のさまざまなスタイルや情報、傾向、実績などを集積し、豊島区のリノベーションにとって、そして地域との効果的な活動を見出していくための準備期間を持ちたいと考えています。
実際には、民間から所管部局へ直接提案があるなど、区へのアプローチは一様ではありませんが、情報共有、調整・協議、意思決定も含めて、全体として調和のとれた仕組みを整備していきます。
もちろん地域の住民の皆さんや区内の企業の方々からの提案も望んでおります。どうぞお尋ねください。

新しい公共でインキュベーション特区も可能か

――国際アート・カルチャー都市、そして公民連携の新しい公共が確立した先には、どんな展開が予想されるでしょうか。民間からは副都心池袋に相応しい新産業の創出、特徴的なビジネス都市の実現を求める声もあります。
池袋を中心に、豊島区は後背地をしっかり備えた東京の大ターミナル都市です。仕掛けをしっかりすれば成長は間違いなくあると思っています。
まちが元気になればなるほどまち全体にインキュベーションの気運が起るような、例えばビジネスと住生活の近接というマッチングの新しい地域が生まれることなどを想像しています。文化と新産業の融合、特に女性たちが輝けるインキュベーション特区なんていいですね。
お話を現実に戻せば、今年度から政策経営部のなかに施設計画部門を移管しています。新しい公共による区の未利用資産の活用や公共施設の再整備などの手法について研究を進めるためです。
今年の予算には、公園トイレの改修や公衆トイレの建て替えなどをはじめとした複数の公民連携事業も実施を予定しています。
区民の皆さまのご意見等も頂戴したく存じます。
――ありがとうございました。

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