最新号88号が発刊されました。

88号特集
東アジア文化都市の決定
今、豊島区のレガシーを築くとき

宿本尚吾副区長に聞く
豊島区の将来像とその魅力

リニューアルオープン予定!変わりゆく池袋西口公園
byみんたん

池袋疾走日記 
2017.10 by古市コータロー

今月のキラリ人
見た目が変われば中身も変わる
ビューティコンサルティング凛 池上里恵 さん

雑司ヶ谷物語 第13回
良質な水、空気、湿度、三大条件を満たした土地
東洋乾板の創業

地域を知る 長崎村
池と川と水の話 そして長崎神社

などなど盛りだくさん
特集は以下から読めます。

特集:宿本尚吾副区長に聞く 豊島区の将来像とその魅力

東アジア文化都市の決定
今、豊島区のレガシーを築くとき

11月7日(火)今年で15年目を迎えた「池袋の路面電車とまちづくりの会」の総会後、宿本尚吾副区長を迎えて『豊島区の将来像とその魅力』と題した講演会が開催された。
2019年東アジア文化都市、そして2020年オリンピック・パラリンピックに向けた豊島区の取り組みは、何を生んでいくのか、レガシー(遺産)とは何か。
宿本副区長の講演録(抜粋)から今後のまちづくりの視点を伺う。
(要約・抜粋 本誌・小林俊史編集長)

東アジア文化都市2019のレガシーとは

2019年に豊島区で開催する東アジア文化都市は、2014年からスタートしており、豊島区が6都市目にあたります。これまでは政令指定都市だとか、もともと中国との繋がりが深い歴史的な都市が選ばれていますが、今回は28万都市の豊島区、人口も少ないし、特別な歴史とかはないわけです。けれども、これからの21世紀のアジアの交流、文化融合を考えると、むしろ豊島区ぐらいのサイズの都市で、しっかり国や都と連携をして開催するということができれば、今後、地方の市町村でもできるなということが示せると思っています。文化庁もそのことを重要に考えていると思います。豊島区は言わば、東アジア文化都市の新たなモデルケースなのです。
豊島区は、東アジア文化都市を成功させることと同時に、それは、まちづくりのレガシーを築く時期になると思っています。

オリンピック後のまちづくりの分野のレガシーでいうと、2012ロンドンオリンピックでの東ロンドンの再生がよく取り上げられています。
オリンピックパークやメインスタジアムが作られた東ロンドンはもともと非常に劣悪な環境で、あまり普通の方が行くようなところではなかったんですね。 この東ロンドンを再生する一環として、ロンドンオリンピックを位置づけているんです。現にまだその開発は終わっていないし、スタジアムはその後、ラグビーのワールドカップをやってますし、世界陸上もやってるんですね。最終的にはこのスタジアムはサッカーのプロチームの競技場になるんです。スタジアムの作り方を考えれば、まったく合理的ではないのですが、とにかくイベントが実施し続けて東ロンドンの再生を完遂することが大事、オリンピックだけじゃなくて、そこまでセットしたいんですね。
また、パラリンピックのためにバリアフリーアクセスとかボランティア意欲が向上したということも言われています。良くなった仕組みは悪くならないので、良いものが残って変わっていく。こういうことが、レガシーなんですね。
東アジア文化都市は1年間やるわけです。言い換えれば1年で終わるんですね。そしてそのときにやったことがその先の日常のまちづくりにずっと残っていく、それがレガシーなのではないでしょうか。

まち全体をどうするのかの意識

こんな報告書があります。「どのようにしてニューヨーク市がオリンピックに勝利をしたのか」。ニューヨーク市作成のものですけども、不思議なタイトルなんですね。どこが不思議かというと、ニューヨークでオリンピックはやってないですよ。2008年の北京、2012年のロンドンの時、ニューヨークは落選してるんです。
オリンピックは招致できなかったけど、その招致運動の過程で、最初に開催プランとして自分たちが描いた「NYC2012」のまちづくりは完遂したというのです。まちづくりでやりたいことを実現するための手段の一つとして、オリンピックを考えていたんですね。だから彼らはは勝利したと表現しています。
このように「まち全体をどうするのか」というプランを持って考えていかないといけないということだと思います。

池袋は、長きにわたってそれほど大きな開発はなかったですけれども、最近は、再開発組合が設置されて実際に動いているものが都電沿線で2つ、それから池袋西口地区、東ガス跡地の東池袋1丁目、区役所向かいの南池袋2丁目C地区の3つが再開発準備組合までできています。
これだけのエリアでこれほどの事業が動いてるっていうのはなかなか珍しいです。新庁舎ができて旧庁舎跡地ハレザ池袋の開発で街が南北に広がったんですね。さらに造幣局が東に延びて、新庁舎の開発が南池袋のC地区に刺激を与え、ハレザ池袋は東池袋1丁目に影響を与えるというふうに伝播しています。  
区役所を移したことの効果が大きいと思います。その跡地がまた開発されて次々に変化をもたらしているのです。
また、池袋は公共施設、つまり道路が充実しています。それとカギになっているのは公園です。区長の発案で今、4つの公園でまちを変えていこうというプランを出していますが、区が中心になって進めていってるっていうところが非常に大きくて、区でコントロールがある程度できてます。これはおそらく渋谷とか新宿とかと全く違うところだと思います。
渋谷は、やっぱり東急が中心になって開発しているし、その東急の開発と渋谷区役所の建て替え、NHKの建て替えなどが意味を持って繋がってるかっていうと疑問です。まち全体をどうしていくっていう感じがあんまり伝わっていない。これは我々に伝わってきてないだけなのかもしれませんが、少なくとも我々はそのまち全体を考えることを意識しています。
これからは車のための道路じゃなくて、歩行者のための空間にしていくべきだとか、時間がかかりますけどそういうことに取り組んでいくべきだと考えています。
低速電動バスの導入

それはつまり、再開発もそれぞれの敷地の中は民間の方の開発になるんですけど、それらの拠点をどう街の中でつないでいくのかということを一生懸命考えているわけです。どうやったら繋がって、と考えるけど建物は動きません。だからといってそこに新しい道路を作るという時代でもない。
そこで今、豊島区では低速電動バスの導入を考えています。これはもともとあったLRTの発想で、LRTが街のなかをぐるぐる回りながらその周辺で開発とつながり、効果を生み出すというイメージでやっていたものを、バスで具現化できないかと考えたわけです。

私は結構いけてるなと思っています。建物が今よりもっと活きてくると思うんです。建物はそもそも動かないから、どう頑張ったって旧庁舎と新庁舎のところはつなげたいけどつながらない、そこをつなげて動いてくれるものがバスです。必ずしもそれに乗らないとしても、まちが一つにまとまった全体のまちづくりを進めていこうという気運が伝わってきて、計画論としても非常に説明がつきやすいように思っています。
回遊性を高める目的に加えて、低速電動バスは、ゆっくり街を見る装置にもなります。移動手段として考えると多分ショートカットして歩いた方が早いという話になるかもしれませんが、今までどこの都市にもない新しい装置を池袋に組み込み、浅草の人力車とかヨーロッパの公園で走ってる馬車のような効果にも期待することができそうです。 
この低速電動バスに加え、シェアサイクルのシステムも豊島区の回遊性の向上には有効な手段になるように感じています。安全面とか利用利便性とかいろいろな課題はありますので、まだ完全に的は絞りきれていません。今は議論を続けているところです。

均質にしないまちづくり

国家戦略特区の緊急整備地域による再開発を改めて考えると、再開発でまとめていくっていうのは、結局、均質なものを作ろう作ろうとしてるんじゃないかと。どんどん均質化していく街を作ろうとしていていいんだろうかという思いはあります。
特区は特別区域っていうぐらいだから本当はユニークな制度になってないといけないんですけど、特別に容積を緩和するといういくつかの条件を整えてみると、出来上がってるものはだいたい似たようなものになってしまいます。
実は、再開発は「夢が実現するんだけどその一方で違う夢も失う」ことになると感じさせられてもいます。では、絶対譲らない夢は何かというのは、ものすごく難しい議論だと思うんですけど、「均質にしない」という意識は大切なのかもしれないと考えています。
今、進めている、4つの公園の活用やグリーン大通りと明治通りの歩行者優先の空間づくりなどは豊島区ならではのものにしていきたいと思っています。 
また、私がなによりも大事だと感じているのは駅前浄化パトロールのような「まちをきれいにしたい、よくしたい」「安心安全なまちをつくる」という区民の皆さんと一緒に動く行動です。こういうことがレガシーになるのだと、これは地域の方々から勉強いたしました。

文化のまちづくりに
新たな課題

表(※3P掲載)は、豊島区の文化政策とまちづくりの一連の流れを自分で整理しようと思って作ったものです。紫色が文化政策で緑色がハード面のまちづくりになっています。これを見ると豊島区は地域の方と一緒に立案した地域のためのイベントをたくさんずっとやっていたんですね。
ここにきて少し風向きの変わったものも出てきました。増えてきたのは、真ん中に書いてあるイベントで、もともとはお台場や有楽町や日本橋など他の地区でやっていたものが池袋でやった方がいいんじゃないかと池袋を開催地として選んで出てきたものです。これらが来るっていうのも大事なことで、今後は来たものをどう生かすか、来たものをどう逃がさないか、まちづくりにどう活かしていくのかというのも、あわせて我々が考えていかないといけない新たな課題かなというふうに思っています。
(平成29年11月7日 池袋の路面電車とまちづくりの会講演会から要約・抜粋)

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