「豊島の選択」第33号 ピックアップ記事

池袋国際交流新年会2013

「池袋中華街構想」…その後
〜当時の世話人 胡逸飛さんに聞く〜

2008年、突然のように池袋西口で繰り広げられた「池袋チャイナタウン(中華街)構想」は、地元を驚かせた。構想を持ち出したのは池袋で働く中国人経営者たちだった、しかし、地元商店街は急な話に反発し、受け入れ難いと「待った」を示した。
この年、池袋駅では副都心線の開業があり、いずれ横浜までつながる計画が都市競争の気運を高め、中華街賛否論争は、「池袋の現状と活性化」を巡って、マスコミ報道も過熱気味に議論を展開した。
それから5年、今年3月にはその副都心線の横浜までの延伸が実現する。当時の社会状況より日中関係が悪化している今、かつての中華街構想のリーダー胡逸飛さんは「池袋のまち」で何を考えるのかを聞いた。

~中華街構想は今も継続していますか~
胡:今は「中華街」という表現は使っていません。もともと、当時の発想も「ストリート」のような、地域を占める「中華街」を作るというイメージではなかったんです。中国人が多く店を出している「池袋」で中国人同士のコミュニケーションやネットワークが街を活性化できればと考えていました。
~でも、「チャイナタウン」の言葉が先行して、地元の反発は強かったですね~
胡:そうですね。当時はこちらもびっくりしました。地域が良くなるだろうという思いでしたから。意外に感じた時期もありました。でも今は、我々が地元とのコミュニケーションが無いなかで、「中華街」と名づけて行動したのでは、心配を生むのも当然だったと理解できています。
~胡さんは池袋でお店を経営していたのですか~
胡:私は日本の広告代理店に勤めていました。以前から日中交流の仕事をしたいと思っていましたので、自分自身は日本人と積極的に交流している日常を感じていました。当時、地元の商店会長さんたちと対話した時、「池袋にはいろいろな出身の人たちが力をあわせて魅力ある街を作ってきた歴史がある。一色(ひといろ)に染めてPRするのは池袋に馴染まない」と語られたのが印象に残っています。
中国と日本、二つの国だけでないさまざまな交流が池袋を魅力的にするのかもしれないと考えるようになりました。
~今はどんな活動をしているのですか~
胡:地元の人たちのまちづくり活動に協力する仲間を募って声を掛けています。昨年11月の豊島区のセーフコミュニティ国際会議の際には、研修セミナーが終わった後の「池袋ツアー」ボランティアガイドに若手が参加してくれました。
また、1月には、池袋国際交流会と題した新年会を開催しました。日中友好協会、華僑研究専門家、在日韓国人連合会、日本経済新聞社、全日本華人華僑連合総会、全日本華人華僑総工会の方々にご挨拶いただき、日本人と中国人約200名の参加者と素敵なパフォーマンスの出演者で楽しい時間を過ごしました。
池袋は今も中華料理をはじめ、物産店、メディア、旅行社、美容室、各種学校、不動産、娯楽、IT企業など中国人が経営している企業は約300社が存在しています。皆、安心して働く環境が何よりと考えています。日中関係が不穏な時期だからこそ、新年会を通じて在日中国人と日本人との交流が一層深まるきっかけを作ろうというのが今回の開催目的でした。
~今後の抱負を~
池袋はいろいろな方が集まり、元気になる素敵な街です。世界に誇れる魅力づくりに貢献したいと思っています。横浜に負けない美味しい中華もその魅力の一つになればと願っています。

 

胡逸飛さん
有限会社 日中交流
上海飛通文化傳播有限公司 プロデューサー 日本在住20年
テレビ番組のコーディネーターなども務めている

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