とっぴぃ「豊島の選択」最新号(120号)が発刊されました。

120号

としま共創トークvol.7
池袋駅東西がつながるウオーカブルなまちへの期待
 簱栄一郎(栄真株式会社 代表取締役社長)
 伊部知顕(ロサラーンド株式会社 代表取締役専務)

祝 豊島区制90周年

『NEXT 100thリーダー特集』

マンガの聖地に登場!「マンガ×学び」の拠点

「マンガピット」オープン!

豊島区2022年度人事情報

第16回「社会貢献活動見本市 創発としま賞受賞
 『日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)』

第17回池袋モンパルナス回遊美術館特集

みんたんの選択
 『トキワ荘通りに行こう』

池袋疾走日記 古市コータロー

We can do it! Toshima! 村瀬愛
 『人が繋がる “結弁当”のこと』

ノリコのエール 村上典子
 『身体表現パフォーマー なかええみさん』

街のこころ 大塚ものがたり 城所信英
 『現代にも続く「明治女学校の余光」の巻』  

雑司が谷物語 吉田いち子
 『子どもたちの恰好の遊び場 雨雀も訪れた「ハイゼの原」』 

大切なことはすべて時代劇から教わった
 最々終章・完結編 大橋英晴

私のまちのサードプレイス
 『co-ba ikebukuro station』

たいしたもんだよ喜劇人 二童(齊木晋一)
 『決定版 日本の喜劇人』著者:小林信彦

Ryozan Park Diary
 『若者の不安を解消する「家族留学」』 越智未空

Book Talk 「本の力」 曽田哲史

これも学習マンガだ!
大人も学べるマンガ入門 山内康裕

世界から日本の先を見る 澤田剛治

見るべき演劇ここに有り!したりされたり
差し入れ日和 髭・シンタリアーノ

トキワ莊のある街から 小出幹雄
 『藤子不二雄Ⓐ、よこたとくお両先生を偲んで…。』

東京B級国際論Returns 鈴木庸介

アート思考の「凄いぞ! 豊島区」 小路浩

池袋中華指南 胡逸飛

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特集は以下から読めます。

としま共創トークvol.7
池袋駅東西がつながるウオーカブルなまちへの期待
 簱栄一郎(栄真株式会社 代表取締役社長)
 伊部知顕(ロサラーンド株式会社 代表取締役専務)

簱:WACCA池袋はオープンして7周年を迎えています。会社はもともと池袋で映画館をやっていましたので伊部さんとは7年ほど前の「池袋シネマチ祭」でご一緒しましたね。WACCAは、都市に住み働く人たちのサードスペースになるよう、これまで日本の食の課題などに取り組んできました。最近は館自体がまちに開いたスペースとなってアートの場を提供しようとチャレンジしています。毎年5月の池袋モンパルナス回遊美術館では〝謎解きアート街歩き〟の会場となったり、池袋在住のアーティスト〝パルナソスの池〟のメンバーの方々にエスカレーターの脇など館内の壁いっぱいに自由に絵を描いていただいたりして、どんな展開が生まれるのか実験も行っています。アーティストも私たちもお互いに〝思い切った〟チャレンジでしたが、館内が外の延長線のように開かれて、偶然通りかかったお客様がアートに出会って、刺激があったり発見があったり、としま未来文化財団のご紹介で、今ちょうどエチカ池袋ギャラリーで作品展示も行うようになりました。アートはチャレンジこそが一番のモチベーション、そんな展開が体感できてうれしかったです。

伊部:ロサ会館は今年10月で64年目になります。先々代が池袋で映画館を始めて75年、その後、総合アミューズメントセンターを作るという思いから始まっています。以来、〝モダンセンスアミューズメントセンター〟を掲げてボウリングやテニス・ゲーム・レストランなど時代を先取りする施設として発展してきました。私がこの会社に入ってからは〝ライフスタイルアミューズメントセンター〟を目指そうと言い続けています。より一層お客様とのつながりを増やし、お客様のライフスタイルにしっかり入っていく施設になろうよ、ということです。それは私どもの施設利用に常連さんが多いという結果につながっていると思います。 今現在は、池袋西口地区に2つの再開発事業が進行していて、私の仕事の半分くらいはそれに費やしています。豊島区が今年初めに区制100周年に向けて「ウォーカブルなまちづくり」を目指すと宣言したことは、これらの再開発事業とも連動していて、池袋の都市をつくる面から歴史的にもやりがいのある取り組みだなと思っています。 私は、自称〝プロフェッショナルウォーカー〟なんて自負するぐらい、学生の頃から街歩きを趣味にしています。簱さんも私と同じ種族でないかなと、今日は、歩くこと自体の楽しさについてお話を交わしたいです。

◎街歩きの楽しさ…1階が重要
簱:私はまちも歩くけど山も歩きます。山で歩く楽しみは五感で感じるものですよね、きれいな景色を眺めて感動し、美味しい空気を吸い、風に触れ、鳥の声を聴いてまた喜びがある。一方、都会ではその街の歴史など、自分なりにその街の良さを発見できる楽しさがあります。豊島区の谷端川や鶴巻川のような暗渠は昔の川の蛇行跡がそのまま道になっていたりしていて、かつてのまちの姿が想像できます。また、池袋モンパルナスなんて言葉を聞くと、都市で楽しむアートとカフェのことを思い起こしたりもします。
まちの1階レベルで素敵なカフェがあることはとてもいいことですね。カフェの魅力によって歩いて楽しいかどうかが決まるのではないかとまで思ってしまう。今の池袋はカフェを探すのたいへんだよね。

伊部:同感です。私もほかの街を歩くときは、朝からその街に入るんです。そこに喫茶店があればモーニングをいただいてスタートします。喫茶店は地域の人々に開放された場所ですね。地元の人々の何気ないトークを聞いてみたりするのも面白いんです。店主がコーヒーカップにこだわっていたり、趣味が感じられたり、それだけでも旅しているような楽しい発見があります。 また、歩いている時に仕事のヒントやアイデアが湧いてくることもあります。京都には「哲学の道」がありますけど、思索しながら歩くことは脳の刺激にもいいのだと思います。ハイデルベルグの「哲学の道」はヘーゲル、ケーニヒスベルグの「哲学の道」はカントの散歩コースだったのです。米国の作家レベッカ・ソルニットの著書「ウォークス・歩くことの精神史」によれば、街を歩いて楽しむことは世界の歴史でも浅いことのようです。ヨーロッパでもこの200年ぐらい、それは家の外が危険だったから。外は敵や野獣がいたため、貴族は自分の庭の中だけを歩いたようです。日本の大名の屋敷庭もそうですね。まさに自由と平和があるからこそ楽しめる文化なのです。 簱:歴史がその都市開発ににじみ出していると感じられると歩いていて楽しいですね。通りに面した1階レベルでその街の魅力が顔出ししているような街並みが大切だと思います。今の日本の不動産事業の課題は1階の家賃が高すぎるということです。街の魅力を1階レベルで顔出しするような事業形態を可能にする仕組みに変えることが必要だと思っています。

伊部:私もそう思います。ロサ会館では「おぐろのまぐろ」という鮪専門店の立ち飲み居酒屋を開店した際に、経営者側がこれならできるという条件についてとことん話合って契約しました。そろばん勘定だけではなくて〝この街のここだったらこういうものが欲しいよ〟にこだわった方がいいと思ったのです。

簱:街の発展を望んでいる地権者の思いの強さが大事だよね。言うは易し、行うは難しの現実があるのも承知しています。経済的にそうならざるを得ないのはわかるけど、ここをなんとかしたいよね。やっぱりそこは地権者が頑張らなきゃ、自分のところでできることはやらなければと思える社会にしたいね。

伊部:再開発事業はそこが大事だと思っています。

◎自由な動きが出てくる街がいい
伊部:この前、町田市にある南町田グランベリーパークに行ってきたんです。とてもいい雰囲気でした。
グランドレベルで1階の店と2階の店が両方見られる構造も楽しいし、隣の鶴間公園内では犬が駆けずり、家族でピクニックしたり、机を持ってきてお花見してたり、ワークショップがあったり、自由に過ごせる無秩序な幸せ感があるなと感じました。あそこはスヌーピーミュージアムも入ってますね。公園内にカフェはなかったけど都会だと普通は禁止されているようなことが自由にできていて楽しかった。

簱:池袋も南池袋公園や中池袋公園、グリーン大通りのリビングループなど、人のにぎやかさが公園とつながってきました。まちの中にいろいろな動きがあった方がいいんだね。池袋は「えきぶくろ」なんて言われてきたけど、駅から外の街なかに出てこなかったのは街なかに面白い動きが見えなかったからじゃないでしょうか。街なかの動きが人々によって自由に生まれることを大事に考えたいですね。再開発で巨大なビルができるのはいいけど、そのビルとビルの間を行ったり来たりするような「ビルぶくろ」になってしまってはつまらないね。自由な動きが出てくるまちがウォーカブルなまちになるということだろうか。

伊部:地上でも地下でも「楽しいことがある」と思えるから歩いて行くんでしょうね。物理的に人の動きを制御するのではなく、そこへ行きたい、歩きたいと思わせること、それに加えて何かしてみたい、冒険してみたいという「場への好奇心」が生まれることも必要だと思います。

簱:そういうモチベーションを失わせてはいけないね。池袋はよく西口行きたい人が東口に、東口に行きたい人が西口に行っちゃうと聞きます。街の入り口で迷わせないようにもしたいね

伊部:最初に混乱するから疲れて苦痛に感じるんですね。駅の地下はわかりにくいとずっと言われています。改札口の向きが悪いのかな、地下通路にもアップルロード、オレンジロードと名前がついているけどそれを知っている人も少ないですね。
ウォーカブルなまちづくりのイメージビジュアルになっている地下から地上への出口もあの場所は実際には丸の内線の改札口が真ん中にあって西口と東口が見通せる場所ではありません。高野区長が東のグリーン大通りと西のアゼリア通りをつなぐウォーカブルストリートとしてイメージしているのは、東から西が見える、西から東が見える、通りがつながっていることがわかるというものではないでしょうか。その向こうに光が見えるような風通しのよいストリート。鉄道会社にとってはたいへんだけど、今回の宣言は東西を結び地下道を歩きやすくする唯一のチャンスではないかと思います。

簱:歩道があるからといって自然に回遊はしないんだね。伊部さんの「そこへ行きたい、歩きたいと思わせること」に賛成です。街なかを巡ってアートを見てまわるのもその仕掛けの一つ、アートにはその可能性があると思います。サンシャインシティを中心に池袋東口や雑司ヶ谷で展開している「ハナサクプロジェクト」もその仕掛けに十分なりそうですね。

伊部:WACCAのアートのように、出会い、発見、刺激があるから楽しいんですよね。そういえばWACCA池袋はショッピング施設というよりも、簱さんのこだわりが施設やテナントに見えるような〝ハタ・ミュージアム〟のようです。今後も徹底的に〝ハタ・ミュージアム〟であってほしいですね。

簱:そんなこと言われたらもっとコレクションしなきゃね(笑)。とにかく来訪するお客様が気持ち良くここで過ごしてほしい、街とつながった広場でいたいという思いでやっています。その基本はテナントさんの売り上げがきちんとあがるような努力が最も大切なんですよね。でも〝ハタ・ミュージアム〟と捉えていただくのはうれしいですね。

伊部:私たちは街を歩くことが大好きな同じ〝種族〟だと確信しました(笑)。100周年に向けたテーマ「ウォーカブルなまちづくり」の価値を高めるためにこれからも一緒に考えていきたいです。皆さん、もっと「歩く」を哲学しましょう。今日はありがとうございました。


2022年4月6日
サンシャインシティ共創空間にて

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