最新号48号が発刊されました

48特集
東京発グローバル・イノベーション特区〜東京で豊島区は入っていない現実〜

アニメがつなぐ池袋の楽しみ方
池袋シネマチ祭(みんたん)

まちづくり最前線
アトリエ村を訪ねて「二つのデッサン教室」

表紙
かぶって出てみよう! みんな見て見て~(「かぶりもの大行進」ワークショップ)

サロンとシェアがあれば「まち」もクリエーターも伸びる
(ヒセキグラフィクス氏)

いきいき!オフィス女子を訪ねて
株式会社システムクエスト(池袋)

東京商工会議所 三村会頭が豊島区を視察

歩こう!とっておきルート90分 紫陽花コース
などなど盛りだくさん

 

今月の特集
国家戦略特区 東京で豊島区は入っていない現実
東京発グローバル・イノベーション特区 再考の動きを起こそう!

池袋が女性人気の向上で「住みたい街」第3位という民間調査を先月話題にしたかと思えば、今度は2040年には豊島区は20代30代の女性が半減してしまうという試算をする少子化研究会から「消滅可能性都市」などと東京で唯一名指しを受けたりして、指標推測の話題は目まぐるしい。
しかし現実に目を向けてみると、2020年を目標に日本が先進都市としての整備を目指すさまざまなプロジェクトが具体化するなか、豊島区では話題にならない東京の国家プロジェクトがある。それが「国家戦略特区」だ。
政府は5月21日から、国家戦略特区で事業を実施する民間企業の第1弾募集を始めた。東京圏では建築基準法や容積率の緩和を活用して高層マンションを建設する事業や外国人医師による診察をする事業など国際競争力の高い事業展開を目指す経営者を集める。選ばれた事業者は国や自治体と今後必要な規制緩和などを話し合うスケジュールとなっている。
実はその特区の区域に豊島区は入っていない。しかしこれまでの経過を見ると、この東京都の特区プロジェクトは再考する声があってもおかしくない。

国際戦略総合特区、東京都「アジアヘッドクオーター特区」から
総合特区制度は2011年民主党政府のもとで8月に制度化、同日より各都道府県からの提案募集が開始され、同年12月に国際戦略総合特区が7か所(北海道、茨城県、東京都、京浜臨海部、愛知県・岐阜県、京都府・大阪府・兵庫県、福岡県)指定された。
国際戦略総合特区は、国民経済の発展を目標に、国から税制の優遇や財政、金融上の支援措置等を受けながら、国際競争力を強化した産業の集積と育成を行う拠点づくりを目指すための政策と位置付けられた。
この時、東京都が提案したのが「アジアヘッドクォーター特区」、グローバル企業のアジア統括拠点や研究開発拠点を東京に誘致し、日本の国内企業と誘致企業のビジネスマッチングを促進することで、「アジアの中心拠点としての東京」の地位の向上を目指すというものである。
東京都はこの対象エリアを東京都心・臨海地域、新宿駅周辺地域、渋谷駅周辺地域、品川駅・田町駅周辺地域、羽田空港跡地の5つに絞って選定し、5年間で外国企業500社の誘致を目標とした。

モデルはシンガポール
この構想の背景には、アジアでシンガポール、香港、上海といった都市の躍進が著しく、特に東京23区とほぼ同じ面積しかないシンガポールの政府主導型による徹底的な外資導入政策に注目したことにある。外資企業の誘致のために産業インフラといったハード面の整備に加え、法人税率の優遇や進出企業の各種手続き、資金調達から入国管理に至るまで、ソフト面の支援も充実していた。また、MICE・国際観光拠点としての取り組みにも力を注ぎ、国際会議開催都市第一位になるなど国際観光立国としての地位を構築したシンガポールをモデルにしていたのである。

国家戦略特区に変わる
2012年12月自民党政権に代わってからは「産業競争力会議」で提案された国家戦略特区がアベノミクス第三の矢として位置づけられた。国家戦略特区は国際戦略総合特区とは若干異なり、規制緩和を中心として資本・人財を呼び込むことを目指すもので「世界で一番ビジネスがしやすい都市」が目標だ。
2013年5月に政府は改めて提案募集したが、東京都は「アジアヘッドクオーター特区」をそのまま持ち越しとした。東京都はオリンピック・パラリンピック誘致で手一杯だったのかもしれないが、結果的に東京圏としては以前からほぼ変わらない対象地域のままの提案だった。

対象は9区のみ諮問委員会も東京全区を促す
公2014年1月に国家戦略特区諮問会議が本格的に始動すると、諮問委員から東京都は全区を対象にすべきとの声が挙がった。規制緩和は区域を限定すると効果がないというのである。
しかし、知事が交代した直後ということもあり、東京都の腰は定まらず、特区への熱意は薄いとも報道されるほどだった。結局3月28日に追加提案「東京発グローバル・イノベーション特区」を発表したが、対象地区としたのは、千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、大田区、渋谷区の9区。「アジアヘッドクオーター特区」のエリアに文京区が加わっただけだ。
都が9区のみに限定した理由は二つ、一、事業がないところを特区指定しても仕方がない、二、他の市区町村や都議会では、雇用や外国人労働者、医療などの規制緩和に反発が強い、と説明している。

追加提案の「東京発グローバル・イノベーション特区」は
その内容は、3本のテーマ、10のプロジェクトで構成されている。

【国際ビジネス環境の整備】
①スピーディーな法人設立支援
②ベンチャー企業丸ごとサポート
③外国企業の人材確保支援
④国際標準のビジネス空間づくり

【医療・創薬イノベーションの拠点形成】
⑤創薬のメッカ形成プロジェクト
⑥東京都版PMDA創設

【おもてなしの国際都市づくり】
⑦外国人安心居住環境整備
⑧東京シャンゼリゼプロジェクト
⑨外国人の快適な滞在実現
⑩外国人向け安心医療・教育提供

規制緩和の是非はあるが、カヤの外でいいのか
今年4月に入ってからも政府は東京都に対し、提案内容を不十分とし、一層の充実を図るよう要請している。特区指定を受けたのは条件付きの合格という諮問委員の意見も報道された。
規制緩和については内容によって是非もあるはずだ。しかし、特区のエリアに指定されていないということでこのままカヤの外にいていいはずはない。
追加提案「東京発グローバル・イノベーション特区」の内容には、豊島区が取り組みたいとしてきた内容も多く入っている。
また、国家戦略特区特例措置には初期メニューとして
①容積率・用途等土地利用規制の見直し
②エリアマネジメントの民間開放(道路占用基準の緩和)
③滞在施設の旅館業法の適用除外
④病床規制の特例による病床の新設・増設の容認
などに取り組むことができる。

豊島区もチャンスをつかもう
豊島区もこのチャンスを考えるべきではないだろうか。豊島の発展形は「創造する人のパワー」と本誌は繰り返してきた。この新しい動きを傍観するような区であってはならない。
東京都は対象事業があるとの申請によって年2回加盟を検討する時期を設けると回答している。動きを起こそう!

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