最新号73号が発刊されました。

73号特集
20年後の池袋に向けて
まちづくりガイドライン(案)を見る

「池袋らしさ」をどう創出するか
公民連携の創発するパワーを最大限に活かそう!

祝 重要文化財指定! 雑司が谷・鬼子母神堂
byみんたん

多くの人が集い、まちの魅力と伝統を伝える場所に
藤香想(株式会社 和・輪・環) 本橋 香里さん

今月のキラリ人
地域の〝癒しスポット〟としてより多くの人々の来園を
目白庭園 園長 瀧川あすみ さん

先進まちづくり事例
雑司が谷が大好き! 
未来のアーティストは「街で育っている」

平成28年第二回区議会定例会
招集あいさつ(要旨)

などなど盛りだくさん

特集:20年後の池袋に向けて「まちづくりガイドライン」最終案を見る
『世界中から人を惹きつける 国際アート・カルチャー都市のメインステージ』
「池袋らしさ」をどう創出するか
 公民連携の創発するパワーを最大限に活かそう!

6月30日、第4回池袋駅周辺地域再生委員会が開催され、「池袋駅周辺地域まちづくりガイドライン」最終案が示された。このガイドラインは、民間と行政が連携・協働して、特定都市再生緊急整備地域にふさわしい都市機能の集積、都市基盤の整備、防災性の向上、地区の魅力向上などを図っていくため、まちづくりの考え方(目指す方向性や基本方針など)や開発整備を行う際のルールなどを定めて公民のパートナーシップを図る共通の指針となるもの。
目標年次は20年先の2035年(平成47年)のまちの姿を想定している。
国際アート・カルチャー都市を目指す豊島区は、どのような「池袋らしさ」を創ろうとするのか、内容を概括してみる。

新たな国際性を有する拠点
池袋の役割は「芸術・文化」を育てること

ガイドライン案はその前提として、池袋が都市再生に取組む理由を、日本の国際競争力になる東京の中で果たすべき役割について次のように表している。

●日本、東京は、世界・アジアの成長と活力を取り込み、新たな芽を育てていくことが重要
●池袋は、丸の内・大手町のような国際ビジネス拠点とは異なる新たな国際性を有する拠点を目指す
●歴史的なりたち、現状の機能集積、文化の多様性、都市構造などから、日本経済・産業の新たな「創造と成長」の強みとなる「芸術・文化」を育て・発展させる拠点としての優位性がある。

そこで、「池袋らしさ」を生かし、持続・発展させるためには、多様な人や文化を受け入れる「交流」「発信」「成長」の場が重要であり、人々が触れ合い、議論し、競い合い、成長の芽を育てていく都市機能、都市空間が必要だとしている。

これからのまちづくり3つの視点と将来像
そのため、長期的な3つの視点でまちづくりの将来像に取り組むと示した。

1、アートカルチャーの魅力で、世界中から人を呼び寄せ、新文化・新産業を育む。
◆池袋の魅力(池袋ブランド)の積極的な発信により世界から人を呼び込む
◆世界中から多様な価値観を持つ人たちが集まり活動することで、新たな価値や魅力が創発する。
2、都市空間を人間優先へ、誰もが主役となれる舞台に
◆人が主役の空間整備
◆安全安心を実感しながら、住民も来街者も普段着で楽しめるヒューマンスケールのまち
3、先人が培ってきた文化資源を活かしながら、新たなまちづくりへ
◆池袋の歴史と多様な価値観を受け止める受容性を活かし、アーティストデビューや起業を目指す人たちのスタートアップの場を提供する。
◆新文化・新産業を育て、まちに取り込むことで池袋の魅力をさらに高めていく。

そして、その将来像は、
『世界中から人を惹きつける 国際アート・カルチャー都市のメインステージ』~界隈を歩き、にぎわいと四季の彩りを感じるまち・池袋 と表現している。

委員会の意見から
「地域連携・コンベンション機能・LRT・多言語化サイン・
リノベーション」の特記

ガイドライン案の検討にあたっては、これまで3回の委員会のなかで主に次のような意見があった。

1、池袋の発展にはコンベンシヨン機能が必要であり、造幣局跡地の開発にあたっては導入を検討してほしい。
2、アート・カルチャーに関する取組は、地域が主体となった芸術祭など国内の取組を参考とし、地域と連携して進めていくべきではないか。
3、都電荒川線を動線としてまちづくりに活かし、都電とLRT構想線がつながるように計画してほしい。
4、地下鉄新駅を記載してほしい。
5、サインの統一に関しては、多言語化も明記しておいたほうがいい。
6、リノベーションを、ファミリー層や女性のためのまちづくりにも活かしてほしい。
7、東京芸術劇場の活用は、戦略的にも重要。
8、安全確保計画でエネルギーのことも盛り込んだほうがよい。
9、交通ゾーンコントロールや歩行者優先の駅前広場などに関しては、なるべく早く関係者と協議を行つてほしい。

実現のための5つの戦略
こうした意見をもとに、ガイドライン案は公民連携で協働してまちづくりに取り組む「5つの戦略」を設定し、具体的に記述している。

戦略1:文化と生活・産業が創発
    するまちづくり
●公園や広場、建築物等の様々な空間を、アート・カルチャーの発信、交流の舞台として活用する。
●国内外で活躍するグローバル企業の集積を図るとともに、カンファレンス機能などを携導する。
●芸術・文化とビジネスなどの異業種の交流や連携による文化産業の活性化と、クリエイティブ企業やベンチャー企業などによる新たなビジネスを育成する。
●アーティスト・イン・レジデンス等、アーティストやクリエーターの活動の場を提供する。
●ファミリー層や女性の暮らしやすさを支える機能など多様なニーズに応えるまちづくりを進める。
●リノベーションにより、低廉で良質な居住空間の確保やアトリエ・稽古場などのアーティストを育てる機能を充実させる。

戦略2:駅からにぎわいが広がる
    まちづくり
●造幣局東京支局移転後の跡地では、防災と文化・交流機能を備えた施設整備を契機に、東池袋駅周辺エリアと大塚、雑司が谷を結ぶ歩行者空閲整備や都電荒川線を活かし、新たな人の流れを生み出す。
●地下通路や駅からまちへのバリアフリー化や案内誘導サインのわかりやすさを向上させる。
●駅前広場に高速バス等の導入スペースを配置するなど、空港や関東以北からをはじめとする多様な交通ニーズに対応する広域交通結節点を形成する。

戦略3:界隈を歩き、楽しめる
    まちづくり
●歩行者を優先した道路空間の確保と、まち歩きが楽しめる道づくりを進める。
●自転車走行環境を整え、自転車駐輪場を確保する。
●駅前広場では、公共交通等を除く自動車交通を抑制し、歩行者を優先した道路空間を形成する。
●まちの回遊性を確保し、誰もが利用しやすく移動しやすい新たな公共交通システムとしてLRTの導入を検討する。

戦略4:誰もが安全一安心に
    暮らし、集えるまちづくり
●「池袋駅周辺地域都市再生安全確保計画」を策定し、各施設での避難経路や一時滞在施設。備蓄倉庫の確保などの安全確保対策を進める。
●駅の地下通路では、区と関連する事業者が連携し、地下と地上の接続空間の拡大、案内誘導サインの設置など、安全で円滑に避難できる経路を確保する。
●発災時における救援活動のため、無電柱化に取組む。
●造幣局東京支局移転後の跡地に整備する防災公園は、豊島区本庁舎と連携した区全体の防災機能を高める公園として整備する。
●分散型エネルギーシステムのネットワーク化の検討を進める。

戦略5:環境と共生し、四季の
    彩りに包まれたまちづくり
●太陽光発電や太陽熱など再生可能エネルギー導入の促進、既存の地域冷暖房供給エリアの拡大を検討する。
●遮熱性舗装の促進や、人工排熱を削減する建築物の省エネルギー化を進める。
●雑司ヶ谷霊園と立教大学を核に、既存の公園や都市開発により創出されたみどりをつなぎ、みどりのネットワークを形成する。
●公園と店舗が連続した街並みや、人々が集い憩うみどりの回廊を形成する。
(※編集部での抜粋による)

なお、今後、池袋駅周辺地域再生委員会では今年度末3月に向けて、東西デッキ・駅前広場・道路等の都市基盤整備方針の中間のまとめと、池袋駅案内サイン共通ルールについて検討することとなっている。

公民連携の創発するまちづくりのため、
大胆に発想・提案・議論の門戸を開くべき

これだけ具体化する項目をずらりと並べると総花的と言えなくもないが、真に公民連携の知恵を結集すれば、一つ一つが機能し合う事業を生み出すことはできるはずだ。
それには、地元区民や民間の発想・提案・議論の門戸をもっと開き、数多ある都市の中でも、池袋でしかできないと言わせる事業へのチャレンジが必要ではないだろうか。
前出したように、ガイドライン案が示すのは、『多様な人や文化を受け入れる「交流」「発信」「成長」の場が重要であり、人々が触れ合い、議論し、競い合い、成長の芽を育てていく都市機能、都市空間が必要』なのである。それには、今からの取り組み姿勢も含まれているはずだ。むしろ、今、そのことができるならば、池袋の目指すべき都市空間は実現するのだろう。
国際アート・カルチャー都市を標榜し、特定都市再生緊急整備地域に指定された今、これまでの手法に執着することなく、大胆な知恵の募集と提案、そして議論が「オール豊島」に必要なのではないだろうか。

例えば「造幣局地区まちづくり計画」
防災公園は屋上広場にしたらという発想

一例で挙げれば、造幣局跡地は約3.2 haの大敷地。以前から、ここにカンファレンスホールあるいは国際見本市を開催する展示場ができないかという区民等の提案がある。
ここはUR都市機構が、防災公園街区整備事業を活用することで、東側に1.7 haの防災公園を、西側に1.3 haの市街地を形成することが決まっている。市街地整備の内容は住宅や教育機関の誘致などの方針があるが、具体案はまだ示されていない。区民等の提案は、防災公園を公園でなく屋上広場に置き換えて、低層の展示場兼被災時の避難シェルターにする発想はどうだろうかというものだ。防災と憩いの公園機能は担保しつつも、都心城北地区に少ない「世界と交流する会議場・展示場」を生み出す提案だ。防災公園街区整備事業という前提に立つ以上、難しいかもしれないが、このように区民のための有効活用を考える熱意のある区民もいるのだ。

豊島区は重要な「行動」「努力」の時期である、と区長も述べている。さまざまな可能性を探る議論を区民と共有するのも、区の「努力」の一つだと思いたい。

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