最新号84号が発刊されました。

84号特集
豊島区 待機児童ゼロ達成を発表

公民連携の効果!
質量ともに日本一の子育て環境を目指して

祝!連載50回 みんたんの選択
byみんたん

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などなど盛りだくさん
特集は以下から読めます。

特集:豊島区 待機児童ゼロ達成を発表

公民連携の効果!
質量ともに日本一の子育て環境を目指して

 豊島区は今年度当初の4月1日の時点で、認可保育施設を希望しても入れなかった「待機児童」数がゼロになったことを発表した。区内では千代田区に続き2区目の実現となる。
 平成27年に策定した「豊島区子どもプラン」(子ども・子育て支援事業計画)で計画した受け入れ枠の増加を大幅に上回る整備を行い、当初目標であった今年度末の実現を一年早めて達成したことになる。
 この取り組みの背景と施策、そして今後の課題について、金子智雄子ども家庭部長と小野寺悠太保育政策担当課長に伺う。
(聞き手 本誌・小林俊史編集長)

受け入れ枠計画をほぼ倍増する
認可保育施設の増設を実行

――待機児童問題は各区でも難関の課題と言われています。まず今年ゼロの豊島区の実態を教えてください

(小野寺課長)待機児童数のカウント方法は、今年の3月に厚生労働省が通達した最新の方法で行っています。 
豊島区内の認可保育施設は、区立認可保育所が19ヵ所、公設民営保育所が2ヵ所、私立認可保育所が39ヵ所、これに加えて地域型保育事業と呼ばれる小規模保育事業所が26ヵ所、家庭的保育事業所が3ヵ所、事業所内保育事業が1ヵ所、認定子ども園が1ヵ所、またベビーシッターを派遣する保育ママ制度が定員80名分あります。これらを希望してもいずれも保育サービスが受けられなかった方が待機児童となるのですが、今年はその対象者がゼロになったということです。
この待機児童の対象者にはなりませんが、希望する認可保育施設に入所できなかったという方は実際にはいらっしゃいます。今年はこうした方のうち40名が、区が補助する都の認証保育所と区が待機児童対策のために時限的に設置している千早臨時保育所を利用していただいています。
全員が希望する施設のサービスを受けられることが理想なのですが、保育施設の特徴として対象児童の年齢(才児)や施設所在地とご住居との距離ほか希望条件のマッチングが非常に難しく、現状でも各保育施設の定員総計よりも実際の受け入れ総実数は511名分も少ない結果となっています。こうしたなかから利用できる枠があっても希望しなかった方が95名いらっしゃいます。

――保育サービスを希望する区民はとても増えていると聞いています。

(金子部長) 乳幼児の保育需要の割合は、この数年だけでも年々激増し続けています。4年前に設定した国における待機児童ゼロ目標も今年度末だったのですが、3年先の2020年度末に改定したほどの伸びです。
豊島区でも保育施設への入所を必要とする割合はここ5年間で10%も増加し、今や全体の50%に近くなっています。もちろん人数も予想を上回って増えており、3年前に4044名だった需要数は今年5230名と1186名もの増となりました。(3p図表参照) 
ライフスタイルにおける働き方や暮らし方の変化と同時に、保育施設の増加・多様化により潜在需要が顕著に表面化してくる傾向を実感しています。
こうした変化に対応するため、区では平成27年に策定した「豊島区子どもプラン」(子ども・子育て支援事業計画)で計画した認可保育施設の受け入れ枠1018名をほぼ倍増する2028名分の増設を実行しました。この3年間で認可保育所22園、小規模保育所13園を新設し、また区立保育園の定員増を図るなどを実現できたことで、平成27年度には209名、平成28年度には105名だった待機児童数を0にすることができたのです。

保育事業は公民連携によってこそ効果が生まれる事業

――そこまで認可保育施設を増やせた理由、秘訣はあるのでしょうか。

(小野寺課長)やはり高野区長が推進する『女性にやさしいまちづくり』の方針のなかで「待機児童ゼロ」について目標年度を決めて特段に施策を進められたことが大きいと思います。
平成25年頃までは、どの自治体でも待機児童数の問題は出ていたものの「いずれ子供の数は減る時代も来るのだから」という空気もありました。保育需要に対して受け入れ施設の備えが間に合わず、希望する保育施設に入所できない保護者による「行政処分に対する不服申し立て」が他区で続いて話題になったのもこの頃です。
平成27年から実施した国の「子ども・子育て支援新制度」に基づき、本区でも「豊島区子どもプラン」(子ども・子育て支援事業計画)をスタートすることになりましたが、この新制度の実施によって各自治体が主体的に計画推進することが義務付けられ、行政内部でも優先付けされ財政面などで政策の推進が図りやすくなったことは事実です。
本区ではいち早く新制度の「地域型保育事業」に対応する小規模保育事業等の認可事業化の支援にも着手しました。各事業者と相談を繰り返して約20か所以上の施設が認可施設となったことも、今、効果が実感できているところです。
またここまでできたのは、私立認可保育所の区内での開設誘致、事業者の募集等に力を入れ、それに応えて施設開設を決めていただいた民間事業者の方々のおかげでもあります。

――事業者側が豊島区内を選択する優遇策などがあったのですか。

(小野寺課長)実は、他区に比べて施設整備等の補助率が特別高いというわけではないです。
と言って、開設条件を緩和しているわけでもありません。むしろ他区よりも厳しい条件で募集することの方が多いです。
私たち担当課では、区内の認可保育所設置の事業者募集の際に、直接訪問してご案内することもありますし、また実際に事業者が運営している既存施設を担当課の職員や保育園長経験者の方と同行して見学することもあります。そうした事業者の方とのコミュニケーションの中で、どうやったら豊島区の募集する条件で保育園運営が適切にできるかについてのヒアリングや相談、調査を積極的に行っています。
そのことから、事業者の方々から豊島区が募集するなら「やってみようか」と積極的に乗ってくださることが多くなってきているように感じています。
(金子部長)これは「保育事業」という特別な分野の特徴かもしれませんが、事業者の方々はもちろん事業の継続的運営と発展を目指しながら、最優先は、子どものためなら、地域のためなら「頑張ってやろう」という精神があるように思います。
一方、担当課職員もその事業者の熱意に応えようと、締め切りギリギリの事業者の提案を東京都に折衝したり、説明努力したりして、私たちの行動や姿勢が、日頃のコミュニケーションのなかで伝わっているようです。
こうしたことから、もともとは他区で予定していた事業者が、豊島区で施設を開設するという事例も少なくありません。
保育事業は公民連携によってこそ効果が生まれる事業だと思っています。それを支えるコミュニケーションと信頼感を得る努力は大切にしています。

ゼロの継続、質の向上
園児のために小学校校庭の一時開放にもチャレンジ!

――今後の展望、課題を。

(金子部長)いうまでもなく、待機児童ゼロ達成はゴールではなく新たなスタートです。うれしいお知らせと同時に区民の方々の潜在的保育需要・内部需要の今後のさらなる高まりは予測できないというのも本音で、それでもゼロを継続していくには、相当な努力が必要と覚悟しています。
しかし、本区の未来像は高野区長が方針として掲げた
「女性にやさしいまちづくり」
「ファミリー層の呼び込み」
によって持続発展都市になることです。待機児童ゼロの継続はもちろん、保育環境のさらなる質の向上を目指していきます。
例えば、地域型保育施設における卒園後3歳児以降の受け入れ連携などの不安解消も課題の一つです。また、今年度は園庭のない私立保育園の園児のために遊び場の確保としてモデルケース的に小学校校庭の一時開放を実施します。
今後も多様化する保育課題に地域と連携してきめ細かく対応していきたいと思っています。

――トップランナーだからこその第2ステップですね。ありがとうございました。

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