最新号93号が発刊されました

93号特集
豊島区2018のまちづくり ちょっと気になる5つの視点

国際アート・カルチャー都市は
文化と生活・産業が創発するまちづくり
~創発のための新たな接点が今必要だ~

赤いバスが池袋の街を回遊する
2019年 EVバス発進! byみんたん

池袋疾走日記 第9回
2018.3 by古市コータロー

今月のキラリ人
健やかな足は健康の基本!
フットマイスター ネイリスト 阪本里絵さん

先進まちづくり事例 
 ラ・フォル・ジュルネTOKYO&
 プレイベントamitié(アミティエ)

わが街のシンボル、西武鉄道本社機能が40年ぶりに里帰り
南池袋一丁目町会長 渡邉隆男さん

などなど盛りだくさん
特集は以下から読めます。

特集:豊島区2018 豊島区のまちづくり ちょっと気になる5つの視点

国際アート・カルチャー都市は文化と生活・産業が創発するまちづくり
~創発のための新たな接点が今必要だ~

2018年度が始まった。
今年は高野区長が年頭に発言しているように、いよいよ19年の東アジア文化都市、20年の東京オリンピック・パラリンピックを迎える前年として豊島区が国際アート・カルチャー都市として世界にデビューする最初の仕上げの年になる。
そこで、あらためて現況のまちづくりの進捗を見てみると、国際アート・カルチャー都市の舞台づくり、いわゆる「にぎわい」の準備は順調に進んでいる一方で、区民と協働する「まちの成長」効果を高める運用面では、高い目標を掲げ、顕著に進めているからこその課題も見える。
あえてこの際、本誌が街場の声から感じる、ちょっと気になる視点を挙げてみたい。

【公民連携のまちづくり】
企業と行政の連携施策…
住民に開いた相談の場で
効果アップを

 昨年の予算で柱となった「公民連携」、確かに昨年一年間でも多数の企業との連携協定が進み、企業が持つストックの活用など施策への反映も顕著になっている。しかし一方で、住民をお客様とだけ捉えてしまっていては、せっかくの施策も独善的なものと映ってもったいない。
 今年2月に行われた「池袋ブランディング・シティ戦略推進シンポジウム」では、「あるものを強く:イノベーションは組み合せ」と題した基調講演を行った米倉誠一郎氏が、後半で行われた推進会議のメンバーによる公民連携のコラボ案のプレゼンを聞いて、「もっと現場を見ようよ!区民を見ようよ!でないと面白い効果ある公共施策にならないよ!」と語りかけていた。
 区民が持つまちの情報と接点を持ち、組み合わせる公民連携の取組過程を忘れてはならないと気づかされる。

【わたしらしく、
   暮らせるまち。】
町会・商店会による
まちづくりとフリーランスのまちづくりの繋ぎ方が必要

 同様の「接点を持つ」という課題は、最近のまちづくり活動の傾向にも当てはまるようだ。
 今年度、「女性にやさしいまちづくり担当課」は「わたしらしく、暮らせるまち。」推進室に名称変更されたが、このテーマのもとで活躍する若者、女性がとても目立つ。子育て世代への行政情報のアプローチ、空き家のリノベーション、まちの活性化を進めるプロジェクトも生みだしていて、まちづくりの意欲が感じられる。しかし、その一方で、仲間うちのイベント活動のように捉えられていて、地域への浸透・影響が低い。
 これにはまちづくりに対する意識の違いが表れているように思う。「わたしらしく…」のまちづくりの意識は、フリーランスの職を持つ者の生活環境改善の面が強く、町会・商店会のまちづくりは行政を補完する自治活動であるからだ。
 時代の変化でもある。昨年末に内閣府が示した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、地域の「稼ぐ力」や「地域価値」の向上を図る「稼げるまちづくり」、民間投資の喚起や所得・雇用の増加等につなげることを推進している。
 防犯・防災・助け合いといった自治活動は「稼ぐ力」でなないが、しかし基本の「まちづくり活動」である。このお互いの意識を繋ぐコーディネーターの役割が地域に必要になっている。

【女性にやさしいまちづくり】
女性が集まるまちづくり会議はやはり行ったほうがいい

 これは以前にも書いたが、消滅可能性都市対策のときに開催したようにF1会議(20~35歳の女性)は、継続して毎年開催したほうがいいのではないか。
前出したように時代の変化、また「働き方改革」もあって女性の暮らしへの要望は日々刻々と変わっているように思う。
 女性によるまちづくり会議は、一時的でなく、その後の提案事業の経過を検証したり、F2、F3など多世代による施策案も加えるなど、継続してこそ「女性のまちづくり」が充実するのではないだろうか。
 取組が進んでいる地域や団体もあるが、それぞれの地域や民間組織内でも女性会議を積極的に開催することは、いろいろな住民同士の接点の可能性を広げるはずで、今後のまちの発展に必要と思う。
 
【インバウンド・国際都市】
豊島区が好きな外国人と地域住民が知り合う場づくりを

 これも再掲になるが、インバウンド観光施策の向上という面だけでなく、地域の魅力を発信、再発見するためにも私たちのまちのことを知って、より良く伝えてくれる外国人の方と一緒にまちづくりを考える必要も出てきている。
 豊島区観光協会では、一昨年より「外国語観光ボランティアガイドの会」が設立されて、フレンドリーガイドサービスが実施されている。外国人の友人を持つ区民は今やとても多い。国際都市化の面からも外国人に対応するまちづくりの視点は不可欠な時代だ。それには、まず豊島区の街が良くなってほしいと考える外国人と知り合い、その視点を知ることが必要だろう。
 豊島区の地域のイベントも多言語化して発信する必要がある。地域住民とそうした外国人とが知り合う場を行政が持つことも一考に値すると思う。

【国際アート・カルチャー推進】
区民の自主企画事業を
いかに増やし、
創発を育てられるか
 
 国際アート・カルチャー都市の実現戦略には、その目的としてこう謳われている。
「文化と生活・産業が創発するまちづくり」
 「歴史ある池袋モンパルナスやマンガ・アニメ文化に加えて、新たな文化・芸術の核となる映像や音楽、娯楽等が、生活と密着する営みの中からも生まれ、育ち、そして産業へと展開する仕組みづくりを推進します。
 産業、文化、観光、福祉、子育て等、それぞれの関係する分野が連携し、時代の変化に応じて、ソーシャルビジネスやコミュニティカフェ等新たなビジネスの展開を支援します。
 池袋では、公民連携で策定する「池袋駅周辺地域まちづくりガイドライン」により、文化と生活・産業が創発するまちづくりをルール化し、機能誘導を図るとともに、その受け皿となる空間整備を進めます。
 特に、国内外で活躍する企業の集積を図り、業務機能を強化するとともに、文化・交流機能との連携強化による、クリエイティブ産業やベンチャー企業の育成を図ります。」
 創発とは、多様な能力が出会い交流することで、一人一人の思いや動きを大切にし、それが相互に作用することで大きなうねりやかたちにつながることだ。
 国際アート・カルチャー特命大使それぞれが持つ知識や経験を活かし、「オールとしま」の推進パワーに変えられるかがカギになる。
 それには、実践の場を積極的に設けることである。
 特命大使を引き受けた区民は、いずれも地域で活動している「まちづくり」の実践者であることに間違いない。地域内でこれまでもさまざまな活動に取り組んだり、テストケースにチャレンジしたりしてきた経験がある。だからこそ地域に根付く歴史や背景から生まれる成功へのヒントを持っている。今、豊島区が「国際アート・カルチャー」の代表的な取り組みとする事業も、急に降って湧いたものでなく、もともとは区民の小さなチャレンジから始まっているものが多い。最初にチャレンジして貴重なエラーを積み上げて成功に導くのは区民の力である。
 左の表にある3つの戦略のなかの個々のテーマは、いずれも特命大使が関わることで、「まちの成長」となって実現するに違いない。
 それがこれまで高野区長が進めてきた「豊島区スタイル」のまちづくりだと思う。そしてこの総仕上げは、われわれ区民が行うのだと信じたい。

おすすめ書籍

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溝口禎三 著

財政支出ゼロで220億円の新庁舎を建てる

豊島区をこよなく愛する著者が前著『文化によるまちづくりで財政赤字が消えた』に引き続き書き下ろした第二弾!「豊島区に住んでいて良かった」としみじみ思える本です。

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