最新号98号発刊しました。

98号特集
豊島区と秩父市が進める
「新たな二地域居住」のモデルとは

これからの区民の選択肢に
多世代型の二地域居住を目指して

街の魅力を再発掘!変わりゆく大塚駅北口
byみんたん

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2018.8~9 by古市コータロー

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みんなの〝笑顔〟が好き! 地域に根差した福祉活動をしたい!
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「面影橋」と「姿見橋」深まる謎を探る その2

などなど盛りだくさん
特集は以下から読めます。

特集:豊島区と秩父市が進める「新たな二地域居住」のモデルとは


これからの区民の選択肢に 多世代型の二地域居住を目指して

豊島区と秩父市は平成27年から積極的な二地域の連携による「生涯活躍のまちづくり」を進めることで両首長が合意し、新たな時代の都市と地方の共生を模索している。
9月11日、豊島区役所で高野豊島区長と久喜秩父市長が合同で記者会見を行い、「新たな二地域居住」のモデルとして、具体的な施策を発表した。これまでに実施してきた移住・交流の促進事業等を反映してどのような二地域居住のモデルを生み出すのか。
担当する政策経営部企画課の澤田健課長と鈴木悠斗係長、秩父市からの派遣職員である熊澤大輔さんに伺う。
(聞き手 本誌・小林俊史編集長)

若い世代を含めた多世代による二地域居住を目指す
―今回の発表のポイントは
澤田課長:二点あります。一つは、豊島区と秩父市が目指す「生涯活躍のまちづくり」の特徴は高齢者(アクティブシニア)だけでなく、若い世代も含めた多世代を対象に考えていることを明確に示したことです。
当初は日本版CCRCといういわゆる「高齢者が元気なうちに地方に移住して社会活動に参加し、必要に応じて医療や介護を受けることができる地域づくり」として注目されましたが、中高年齢者を対象にする考え方だけではなく、若い世代も対象にして多世代による秩父市への移住を目指すことで、区民が豊かな生活を実現するためのライフスタイルの選択肢を拡大する二地域の新たな連携モデルを構築したいという目的があります。
もう一つは、移住・交流の実施事業として、このたび秩父市で市内に区民の移住を支援する交流拠点施設と豊島区民も入居対象とされているサービス付き高齢者向け住宅を整備する「花の木プロジェクト」がスタートすることです。敷地の北側に市が交流拠点施設を作り、南側に民間事業者が住宅を整備する公民連携型のまちづくりを進めていきます。

平日・土日のライフスタイルを叶える相互連携
―新たな二地域居住とはどんなイメージですか
澤田課長:高野区長は「人口を奪い合わない移住・交流」という言葉で表現されています。
移住することが地域を離れるということではなく、平日は秩父市で自然豊かな環境で生活し、土日は豊島区の文化芸術イベントに参加する、あるいは、平日は勤務や通学のため豊島区で生活し、土日は秩父市の自然豊かな環境で暮らすといった都市と地方両方のライフスタイルを各世代に合わせて満喫できるといったイメージです。 さらに高野区長は、移住することで住民サービスの低下につながったり、逆にお互いの自治体が無理してサービスするようなことがないようなモデル構築に挑戦すると示されています。
これは、今後、豊島区と秩父市の間で移住希望者の価値観にあわせたサービス面での相互連携が求められることになります。
これまで行った移住・交流事業を通じて区民の方々のご意見やご提案、ご質問を伺っておりますので、それらの反映しながら「二地域居住」が実現しやすい環境を整備していくことが当面の課題です。

お試し農体験や区民ひろば
交流事業、公民連携事業も好評
―若い世代を含めた移住・交流に向けての取り組みは
鈴木係長:豊島区と秩父市の移住・交流促進事業としては、平成28年に「地方居住を考えるワークショップ」を開催し、移住のあり方や多世代共創のまちを考える場を設けました。5回開催し、豊島区民と秩父市関係者42 名の参加があり、提案書もいただいています。
また、昨年は秩父への移住を希望、検討されている方向けに、秩父市内工務店のモデルハウスを3~7日間無料で利用可能とした「お試し居住事業」を実施しました。平成30年8月末現在で豊島区民を含め、37組104名の利用があり、感想やご意見をいただいています。このほか、昨年は9月にモニターツアーも行いました。9組23名が参加して、この模様は「とっぴぃ」さんの昨年の10月号(87号)で記事にしていただきました。今年も11月に第2回を実施する予定です。
今年はさらに秩父市に農業体験型農園を6月に開園いただき、お試し農体験事業を始めています。23名の申込があり、月一回の農体験(午前中)と交流事業(午後)を11月まで継続して実施しています。サツマイモやカボチャを栽培し、植え付けから、収穫までを地元の農家の方と一緒に育てて収穫したり、「秩父学」講座に一緒に参加したりなどお楽しみいただいています。
豊島区民の方々に広く秩父に親しんでいただこうと始めた区民ひろばとの交流事業も好評です。昨年は、秩父産木材を活用した木工教室、秩父銘仙に関するワークショップ・物販、秩父屋台囃子の披露など5回開催しました。今年も継続しています。
公民連携のコラボ事業もあります。としま産業振興プラザの指定管理者であるサントリーパブリシティサービス㈱等と連携し、秩父市の「食」をテーマにした「IKE・Biz ワイン講座」を7月に行いました。「自家畑で栽培したぶどう+自社醸造所での生産」という本格的な自家製秩父産ワインで有名な秩父ファーマーズファクトリー「兎田(うさぎだ)ワイナリー」さんがワインの試飲や紹介をしてくれました。11月にはIKE・Biz 1階のegg(レストラン)で全国的にも有名な秩父市の卵農場「アクアファーム秩父」の卵を使ったコラボ料理を提供する企画もあります。
こうした取り組みのなかから、若い世代を含めた区民の方々のライフスタイルにあったマッチングが生まれればいいなと思っています。

ハローワークとの連携、
市有住宅では二地域居住も可能な条件緩和も
熊澤課員:秩父市では、昨年4月より秩父地域地場産業振興センター内に「移住相談センター」を開設しました。職員と地域おこし協力隊が移住相談への対応や秩父市のPR活動を行っています。お電話での問い合わせでは軽自動車への助成・リフォーム助成・お試し居住、空き家バンク、その他移住イベントに関わるものが多いです。 また、来庁された方には、相談者のご要望により不動産業者や仕事(ジョブプラザ)、また支援制度の紹介や、市有住宅の案内を行っています。共同記者会見の後は、サービス付き高齢者向け住宅(後出)についての問い合わせも多くなりました。今年度は8月末の電話相談件数は70件、来客相談は40件、お試し居住は15組46人74日の稼働となっています。
この「移住相談センター」は同建物内にハローワーク(ジョブプラザ)が設置されています。ハローワークとの連携により来訪者の求職の相談などが円滑にできるほか、合同就職説明会での移住ブース設置や、出張移住相談カフェなども積極的に行っており、移住推進にご協力いただいております。
また、今年度は4月1日より、秩父市への移住や二地域居住を検討している豊島区民の方々向けに、秩父市中村町3丁目の「秩父市有住宅(井ノ尻住宅)」の入居条件を緩和し、単身者や住民票を移さない二地域居住希望の方も入居可能といたしました。秩父市側でも若い世代を含めた二地域居住の環境整備に努めております。

秩父市に平成31年秋完成 
サービス付き高齢者向け住宅
澤田課長:こうした移住・交流促進事業に加え、いよいよ実践型としてスタートするのが、「花の木プロジェクト」です。 秩父市内に市が豊島区民の移住を支援する交流拠点施設を、民間事業者(㈱コミュニティネット)がサービス付き高齢者向け住宅(「サ高住」)を整備する公民連携型のまちづくりになります。交流拠点施設は来年3月、サ高住は来年秋頃完成予定です。
地域に開かれた「交流拠点施設」により入居者が地域に溶け込んだかたちで、生きがいをもって健康でアクティブな生活が送れるよう配慮するとともに、地域医療機関等とも連携し、医療・福祉など「地域包括ケア」の整った「多世代共生のまちづくり」のモデルとしていきます。
この住宅部分は約20戸(1人用16戸、1~2人用2戸、2人用2戸)が完成予定で、豊島区民の60歳以上を主な想定入居者としています。

多世代型の二地域居住に
適したサービスのあり方が課題
―今後の課題は
澤田課長:多世代型の移住・交流事業のモデルを目指すなかで、特に若い世代への働きかけは、やはりワークライフバランスを意識したメリットをいかに見いだせるかにあると思います。それには「これからの働き方」についてもさまざまなアプローチが必要です。そうした調査・検討もさらに充実させていきたいと思います。
また、二地域の住民サービスの相違についても、新たな視点での研究が必要です。給付や割引制度といった数量的な検証だけでなく、情報量を含め二地域居住にあったサービス提供のあり方を積極的に求めていく必要があると感じています。
―ありがとうございました。

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